新潟県の燕三条地域で作られる「ステンレスエコカップ」は、職人技術を象徴する商品としてビールをよりおいしく飲めるように開発された。

 カップは一見シンプルだが、細部には燕三条のステンレス加工技術が用いられている。使ってみて実感できるのが、まず口当たりのやさしさだ。一般的なステンレスカップの場合、フチ部分はどうしても刃物のような固い口当たりになってしまう。その感触をやわらげるため、フチに巻き加工が施されているのだ。素人目にはただステンレス地を折り返したように見えるが、底部に向かって径が小さくなっているカップの場合、フチを巻いて潰せば当然ステンレス地に余りが出てしまう。余りを出さずきれいに巻いてつぶすのは、至難の業なのだという。

 カップが非常に軽いことにも驚かされる。通常のステンレスカップは1ミリ程度の厚みがあるが、「ステンレスエコカップ」は最薄部分で約0.3ミリしかない。ステンレスをこれほど薄く延ばすには高い技術が必要だが、この薄さのお陰で、手に持ったときにビールの冷たさが楽しめるのだ。

燕三条地域のステンレス加工技術の粋を集めたエコカップ。約90グラムと非常に軽い。自宅ではもちろん、屋外キャンプなどで紙コップの代わりに使うのにも向く。実勢価格1800円~
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 そして極めつけが、ビールの旨みを引き出すために工夫された研磨仕上げだ。

 カップの底面には緻密ならせん状のキズが入っていて、これがキメの細かいクリーミーな泡を生み出す。「キズが細かすぎると泡が立ちにくく、荒いと泡が大きくなってしまう。長年の研磨の経験から、泡が最もきめ細かく豊かに立つカップに仕上げている」(ステンレスエコカップの研磨を手がける小林研業代表の小林一夫氏)。

小林研業代表の小林一夫氏。1943年新潟県生まれ。中学卒業後18歳で地元の農協に就職したが、62年、貯蓄と知人からの融資を元手に工場を作って起業。研磨については素人だったが、雇用した研磨職人の技術を見ながら試行錯誤して腕を磨いたという。常に工夫をこらして研磨技術を探求する姿勢は創業当時から一貫している