最近は、ユニークな新人アーティスト探しに力が入るマーティ・フリードマン。まだまだ読者のみなさんに伝えたい、面白い個性の新顔はたくさんいる!と断言します。

 現在発売中の「日経エンタテインメント!」7月号(表紙・ももいろクローバーZ)で「私立恵比寿中学」「クリープハイプ」「Hello Sleepwalkers」の3組を分析したほか、この「延長戦」では、ニコニコ動画出身の男性ソロ「米津玄師」、AKB48を卒業しソロデビューを果たした「小野恵令奈」、そしてアメリカ生まれ、大阪育ちのK系ガール「bómi」の3組をメタル斬りします。

 今回もまた、3組の新人アーティストの注目曲を取り上げて、それぞれのサウンドの特徴をチェックしてみようと思います。

 まず1曲目は、米津玄師さんの『ゴーゴー幽霊船』。彼はニコニコ動画のユーザーには「ハチ」のユーザーネームで知られているボカロP。そのソロデビューアルバムに収められたリード曲です。

 ニコニコ動画は、新人のアーティストにとってすごくいいアピールの場だよね。特に、自分の家のパソコンで音楽を作ってるDTM(デスクトップミュージック)の人たちは、バンドの人たちと違ってあまりライブをしないから、これまではなかなかアピールの場がなかったけど、今はニコ動のおかげで自分の音楽をじゃんじゃん発表できるじゃん。他のユーザーからの感想コメントもリアルタイムでもらえるし、新しいコラボ相手を見つけるのにも役立つし、いいことづくめだよ。

 この『ゴーゴー幽霊船』は、音色の組み合わせがすごく新鮮で驚きました。ほかの誰のモノマネでもなくて、世界で米津さんにしか作れないようなオリジナルなサウンドだね。サビのメロディーも超キャッチーで、一度耳に入ったら、耳の中に何日もずっと残ってそうなくらいじゃん。

 注目してほしいのは、この曲の中に、最近のDTMサウンドの“あるある”的な現象が2つも入っていることです。

 まず1つ目は、調和しない音をあえて一緒に鳴らす、「不協和音」の使い方がおいしいこと。メロディーの中にときどき“船酔い”みたいな不思議な感覚が混ざるんだよね。DTMを作っている人たちって、音楽の知識がすごく豊富だから、普通のありふれた音階のメロディーには飽きていて、冒険的なメロディーにチャレンジしたがる人が多いんだよ。

 不協和音の使い方はプロのミュージシャンにとっても難しくて、“天才とバカは紙一重”っていうところもあります。ヘタに使うと、曲がまとまらなくなっちゃうことも多いんです。でも、この曲はその成功例だね。あまりにうまく使ってるから、一般の人は、どこが不協和音になってるか、言われないと気づかないんじゃないかな。この現象は、実はももいろクローバーZのプロデュースでおなじみのヒャダインさんの曲についても言えることです。

 もう1つの「DTMあるある」は、ギターのフレーズがいい意味で変態っぽくて、面白いこと。DTMの人たちはプロのギタリストじゃない場合がほとんどだけど、だからこそ逆に、普通のギタリストが思いつかないようなヘンテコなフレーズをたまたま見つけて、面白い使い方をしている場合が多いんだよ。

 この曲で言うと、ラストの近くに出てくるギターなんかがまさにその例。ひょっとしたらギターの音をサンプリングしてキーボードで弾いてるのかもしれないけど、どっちにしろ、本職がギタリストの僕にとっては、すごく興味深いサウンドだね。

米津玄師
『ゴーゴー幽霊船』
5月リリースのアルバム『diorama』に収録。「米津さんは、ボーカルもすごくいい声だね。こういうポップな曲だけじゃなくて、バラードも全然こなせちゃいそう」。
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