今の若者は、期待を喪失している

原田: このコラムは、多くのビジネスパーソンが読んで下さっています。ビジネスという観点で言えば、今の若者たちは、「嫌消費世代」とも呼ばれています。車買わない、お酒飲まない、海外旅行に行かない。消費を過剰に抑えるこうした特徴も、小さな安心を得るために起こっているとお考えですか?

竹中: 何もかもミニマムに済ませてしまう。色々な付き合いもミニマムにするし、消費もミニマムにするし、買い物に出る回数もミニマムにする。これ、オジサンから言うとね、もったいないわけです。もっと楽しんだらいいのになあ。

 何を言いたいかというと、自分の将来に対する期待値がすごく低いということなんです。2008年にノーベル経済学賞を取ったポール・クルーグマンが、「The age of diminished expectations」という本を書いています。「期待喪失の時代」という意味です。

原田: 今の若者たちの満足度が高いのは、期待が下がっているからということですね。

竹中: そうです。期待が低いと、人間は、どうせ何をやっても儲からない、どうせたいした家に住めない。どうせたいした人生にならない、という思考に陥る。

 実はね、この「期待喪失」が経済で一番怖いんです。期待は必ず自己実現するからです。高度成長期には、日本が高度成長するぞと、みんなが思ったから、企業は投資し、個人は消費しました。逆に、必要以上に期待を喪失してしまうと、それが実現してしまい、自らの手で自らの将来を閉ざしてしまうことにつながります。すごくもったいないと思いますね。

原田: 疲弊した企業、疲れたサラリーマンも多く、あの人みたいになりたいとか、あの企業に入りたいとか、憧れたり目指したりするロールモデルが日本から少なくなってしまっている、という点も、若者が期待を持てない一因になっているのでしょうか。

竹中: それは事実だと思います。が、それも“人のせい”にしていますよね。例えば、明治維新の時には、若者はみな頑張った。でも、ロールモデルなんか無かったですよ。ロールモデルがあるのを前提だと思ってしまう方が不自然です。ロールモデルは、基本的には自分で作るものだと思います。