革命的な業態のフレンチ店登場

 外食産業のイノベーションに「まだこの手があったか!」と驚愕する革命が進行しつつある。バリュークリエイト(VALUE CREATE株式会社:坂本孝社長)が経営する『俺のイタリアン』と『俺のフレンチ』の話である。  

 2012年6月時点で両業態あわせて都内に7店舗。すべての店舗が、予約が1カ月待ちになるほどの人気で、7店舗中6店舗は食べログのトップ5000店にランクインされている。  

 最初の出店が2011年9月であるから、イタリアン/フレンチ業態への新規参入後わずか10カ月で、顧客の圧倒的な支持を勝ち得ていることになる。

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 日本国内に飲食店は50万店舗あると言われているので、トップ5000店とは上位1%を意味する。もし飲食店に偏差値があるとすれば、偏差値73以上で東大クラスということになるのだが、実はそれ以上の実力がある。  

 『俺のイタリアン』『俺のフレンチ』両業態の厨房には、グランメゾンと呼ばれるフランスの最高級レストランを切り盛りしてきたシェフたちが立ち、彼らがミシュランの星を獲得していた当時にお店で提供していたスペシャリテと呼ばれる名物料理を提供しているからだ。  

 5月に銀座に開店したばかりの『俺のフレンチ GINZA』には3人のスーパーシェフがいる。シェ松尾・松濤レストランの総料理長だった能勢和秀氏、シェ松尾・青山サロン総料理長だった布川鉄英氏、ジョエル・ロブションから俺のフレンチに合流した飯田夢崇氏。実はこの3人は能勢シェフと師弟関係にあるのだが、その3人が息を合わせて厨房で料理を作る様子はまさに壮観である。

 『俺のフレンチ』『俺のイタリアン』がこれだけの顧客からの支持を得ている最大のキーワードは価格破壊である。能勢シェフのスペシャリテとしてシェ松尾・松濤レストランのアラカルトで1万5000円で提供されていた牛フィレ肉のロッシーニが、『俺のフレンチ GINZA』では、ボリュームアップした上で1280円で提供されている。  

 同じく、活きオマールのローストも1280円。これも能勢シェフのスペシャリテで、一匹のオマールを真っ二つに割ったものに貴腐ワインを贅沢に使ったソースがかけられている。シェ松尾時代は半身だけが提供されていたそうだが、ここではボリュームは2倍ということになる。

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 和牛ほほ肉の赤ワイン煮、仔羊背肉のロースト、フォアグラのコンフィといったメインメニューが980円。さらに、お店で提供される高級ワインはすべて酒販店の販売価格に999円を加えたものが店舗での提供価格になっている。  

 価格が安いということは、どこかにからくりがあるのが世の常である。しかし、そのからくりがないところが、『俺のフレンチ』『俺のイタリアン』のビジネスモデルの面白いところだ。  

 実際にバリュークリエイトの坂本社長はシェフたちに「もっと原価率をバンバンかけろ!圧倒的に美味しいもの出せ!」と言って激を飛ばしているという。  

 かくいう私はかなりの食通で、週3回は高級なフォアグラを食さないと気分が乗らないという結構贅沢な人間なのだが、知人に紹介されて最初に訪れた『俺のフレンチ GINZA』で、フォアグラが載ったロッシーニステーキにナイフを入れてみて驚愕した瞬間のことを今でも覚えている。  

 これほど柔らかい赤身の牛肉料理には超一流のレストランでもなかなかお目にかかることはできない。驚くべき品質の料理が、驚くべき低価格で提供されているのである。  

 この日を境に私の知的好奇心アンテナに強烈なフラグが立ち、その後の2週間で『俺のフレンチ』『俺のイタリアン』に、合計5回来店させていただくことになり、そこでこの業態の驚愕すべきビジネスモデルを理解することとなった。  

 この業態は革命的である。私が理解したその秘密を今回のコラムで紹介することにしたい。