ソニーやパナソニック、シャープなど、テレビメーカーが軒並み元気がない中で、実はとても元気なのが三菱電機です。

麻倉怜士(あさくら・れいじ) デジタルメディア評論家、日本画質学会副会長、津田塾大学講師(音楽)

 これまでランキングで言うとソニーやパナソニック、東芝が上に来て、その次にシャープといった感じで、三菱電機の印象は薄い人がほとんどでしょう多いでしょう。ところが今の薄型テレビ業界では、三菱がとても元気で前向きなんですよ。これから三菱の時代が始まるのではないかという予感すらあります。

 三菱電機がほかのメーカーと違うのは、海外市場で販売していないことです。他社はこれから数を販売することが大切とか、国ごとに設計変更をしない世界統一モデルだとか言っている状況であっても、三菱は国内だけで販売しているのです。

 世界戦略モデルとなると、画質については絶対的に“サムスン的”にしなければなりません。サムスン電子がマーケットリーダーであり、それをフォローする必要があるからです。そこにはまったく繊細さはなく、明るければ明るいほど、色が強ければ強いほどいいというひじょうに大味なものです。世界で売るには、世界中で受ける画質にしなければならないのは当然です。しかし三菱は日本市場だけ考えればいいというのが最初の強みです。日本のユーザーはたいへん画質コンシャスです。そこが世界と違うところ。その特別なユーザーの好みだけを考えればよいのです。

レーザーバックライトで色再現性を大幅に改善

 三菱電機の強みとは技術的に会社全体がしっかりとサポートしていることです。つまり総合電機メーカーならではの強みを発揮している。その一つが「レーザー」です。

 三菱電機は昨年の「CEATEC JAPAN」で「レーザーテレビ」を出展していました。三菱はレーザーのリアプロジェクションテレビを以前から作っています。今回はバックライトに赤色レーザーを使ったことで、白色レーザーでは決して出せないピュアな赤を出せるようになりました。

 白色LEDの場合は青色のLED素子が発光します。それを基に全部の色を出さなければいけないので、白色の前に黄色フィルターを入れるんです。そうすると特定の色が出にくくなります。

 ところが、赤のレーザーはピュアな赤を発光することが可能です。それををうまく使うことでこれまでにない色が出せるのです。赤は完全にレーザーに任せられるので、他の色はLEDで出しますが、赤の負担がなくなることにより、緑も青も相対的に良くなるということです。話題の有機ELでもここまでの赤は出せません。

 一口に有機ELといっても、サムスン電子の有機ELはRGBの3原色を用いていますが、LGエレクトロニクスは白色を用いているため、前面のフィルターの再現能力以上の色は出ません。

 そう考えると有機ELより圧倒的に赤の再現性が高いレーザーが、自社内の技術としてあるというのは、きわめて強いことなのです。

 三菱電機はCDのピックアップ用途として赤色レーザーのシェアを全世界で押さえています。このため、単価も安い。自社の世界的に強い技術をテレビに応用したのです。これはほかのメーカーにできないワン・アンド・オンリーですね。

 おそらく新モデルに、この技術を搭載してくることでしょう。日本メーカーがやるべきことはそれなのです。