麻倉怜士(あさくら・れいじ) デジタルメディア評論家、日本画質学会副会長、津田塾大学講師(音楽)

 今回から2回に分けて、薄型テレビが今後どうあるべきかについて提案していきたいと思います。

 テレビメーカーは現在大変な時期にあります。原因は明らかなのですが、2011年7月の地デジ完全移行に向けてテレビが売れすぎたからです。その反動が来ているというのは当然のことですね。

 GfKジャパンの調べによると、2009年は約1384万台、2010年は2644万台、2011年は2081万台のテレビが売れたのですが、2012年には1100万台程度と見込んでいます。800万台~900万台という予測もあり、これは2006年ぐらいの数字です。

 毎年の買い替え需要を考えると、だいたい1000万台程度はあります。ブラウン管テレビの時代は800万台ぐらいでした。それを考えると、800万~1000万台程度売れるというのが普通なのです。

 2010年、2011年はアナログ停波という締め切りが迫っていたので多くの人が焦って買ったため、当然その先の需要を食いつぶしているのです。

 アナログ停波直前は“超バブル期”で商品が足りず、購入者も一流製品でなくてもいいと、どんどん買っていきました。メーカーにとっても、あまりに需要が膨らんだため、製品を吟味して作るというよりラインアップや台数をそろえることが重要でした。

 ソニー「BRAVIAシリーズ」などはその典型例です。先日発表された新モデルは5シリーズですが、以前は17シリーズもありました。そこにサイズまで加わるのですから相当な種類です。

ソニーが2012年3月23日に発表した「BRAVIAシリーズ」春モデルラインアップは5シリーズ。アナログ停波前のモデルにくらべるとかなり少なくなっている
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 アナログ停波前は手に入れられるパネルを全部入れて、OEM(Original Equipment Manufacturer:相手先ブランドの設計を基に製造するメーカー)やODM(Original Design Manufacturer:自社で設計製造を担当するメーカー)などを活用して数量を追求しなければいけない時代でした。

 停波後も買い替え需要はありますが、停波直前のような浮ついた需要はなくなり、いよいよちゃんとした意味で売れるものが何か、ユーザーを感動させる、わくわくさせるものはなにかを追求しなければ売れなくなりました。ニーズもシーズも一段落して、メーカーはテレビの需要をまじめに開拓しようと動いている感じがあります。