SOPA法案とPIPA法案を巡る騒動は米国議会における法案審議の無期延期という形で決着したが、そこに至る過程でのネット企業とネット・ユーザーの一斉蜂起は、米国と欧州で“ネット上の自由”というとてつもない怪物を産み出してしまったのではないだろうか。

「ロビイング2.0」と「ネット上の自由」

 米国では、今回の騒動を仕掛けたネット業界自身がネット上での一斉蜂起の成功に驚いているようにも見える。

 米国ではどの産業もワシントンでのロビイング(政治への根回し)に多額の資金を使っている。それはネット業界も例外ではない。米国の政治資金を調査・監視する非営利団体Center for Responsive Politicsによると、コンピューター/ネット産業全体で2011年に1億2500万ドルをロビイングに使っている。この金額はハリウッドの1億2200万ドルを上回っており、ネット業界も実は伝統的な手法で政治に働きかけてきたことが分かる。

 しかし、多くの関係者や識者が、こうしたロビイングのみでは法案審議の無期延期という結果は勝ち取れなかったであろうと認めている。ネット上での一斉蜂起という行動には伝統的なロビイングを遥かに凌ぐインパクトがあったのである。それは何故か。その理由としては2つの点を指摘できよう。

 1つは、ロビイングの質的な変化である。伝統的なロビイングは産業(供給側)、消費者団体(需要側)が個別の利害を追求するものであった。それに対し、今回の一斉蜂起はネット企業(供給側)とユーザー(需要側)が団結して行動するという、ロビイングの概念からは希有なものだったのである。実際、そうした事実を踏まえ、今回の一斉蜂起は「ロビイング2.0」と言えるという評価さえも出始めている。

Center for Responsive Politicsによれば、ネット業界は2011年、ハリウッドを上回る金額をロビイングに使った
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 もう1つは、ネットの影響力もさることながら、ネットを使いこなす若い世代のポテンシャルである。Pew Research Centerの集計によると、一斉蜂起があった翌々日から4日間の米国のネット上では、30歳以下の米国人の若者の間でもっともフォローされたニュースのトピックはSOPA法案とPIPA法案であった。

 大統領選の共和党予備選などもっと重要なニュースがいくらでもある中でのこの結果は、ネット上での情報流通やネット・ユーザーの関心がかなり偏っていることを示している。個人的にはそれ自体由々しき問題と思うが、それは裏を返して言えば、ネットが当たり前の若い世代にとっては、「ネット上の自由」(digital freedom)や「ネット上の権利」(digital rights)が最大の関心事となっていることを示しているのかもしれない。

 即ち、SOPA法案とPIPA法案を巡る騒動を総括すると、「ロビイング2.0」とも言えるロビイングの進化と、政治アジェンダにおける「ネット上の自由」の重要性の高まりという2点に集約できるのかもしれない。ネットの影響力が高まったがゆえに、そのネットの自由を制約するものは誰が相手でも容赦しないというネット側の意思表示である。