「キュレーター」に聞く仕事術

 今回お話をうかがうヒットの仕掛け人は、キュレーターの長谷川祐子さん(東京都現代美術館/チーフ・キュレーター)だ。

 「キュレーション」(キュレーター)という言葉は近年にわかに注目を集めている。ソーシャルメディアも駆使した「21世紀の情報編集・発信スキル」といった意味合いで用いられることも多いこの言葉だが、人によって解釈と定義はさまざま。何をもってそう呼ぶのか、いまいち不明なことも多い。

 ご存知のように「キュレーター」はもともと、美術分野で耳にすることが多い専門職である。「学芸員」という呼び方がよりポピュラーかもしれないが、「キュレーター」と言ったときには単に名画解説や美術ガイドを行うだけではなく、主体的に展覧会を企画し、アートと時代の関わり方をデザインしていく職種というイメージもある。

 そのフィールドに長く携わっているエキスパートがどんなふうに発想し、仕事を進めているのかを伺ってみることで、モヤモヤした「キュレーター像」を少しクリアにできるのではないか。

 長谷川さんは1980年代にキュレーターとしての活動を開始している。水戸芸術館現代美術ギャラリー、世田谷美術館などを経て、金沢21世紀美術館(2004年オープン)にはプロジェクト立ち上げの段階から参加。2006年より東京都現代美術館で現職を務める。イスタンブール・ビエンナーレ(2001年)など、数々の国際的美術展を成功させたことでも知られる。

 そんな長谷川さんが考える「キュレーション」とはどういうものだろう? 難解とも言われる「現代アート」をビギナーが楽しむにはどうすればいいのか?

 今回は主に上記ふたつの関心から質問してみたのだが、話題はデジタル時代におけるクリエイションやコミュニケーションのあり方にまで広がり、長いインタビューとなったため、前後編でお送りしたい。

 アートに関心のある方はもちろん、「キュレーション」という行為の可能性を考えている方々にもぜひお読みいただければと思う。

長谷川祐子(はせがわ ゆうこ)
東京都現代美術館 チーフキュレーター、多摩美術大学特任教授。京都大学法学部卒業、東京芸術大学大学院修了後、水戸芸術館、世田谷美術館勤務、ホイットニー美術館研修などを経て、1999年より金沢21世紀美術館の立ち上げに参加、建築、コレクションなどのディレクションを行う。オープニング展『21世紀の出会い̶共鳴、ここ・か ら』、『Matthew Barney:Drawing Restraint9』などを企画。 また、2001年イスタンブールビエンナーレの総合コミッショナー、 2002年上海ビエンナーレ、2005年メデイアシテイ・ソウル、2010年サンパウロ・ビエンナーレの共同キュレーター、第12回ヴェニス建築ビエンナーレのアーティスティック・アドバイザー、2013年第11回シャルジャ・ビエンナーレのキュレーターを務める。東京都現代美術館にて「東京アートミーティング」という他ジャンルの専門家との共同企画を進行中。2011年はSANAAと『東京アートミーティング(第2回) これからの建築空間―建築、アート、人々の新しい環境』を開催。2006年より現職。著書「女の子のための現代アート入門」(淡交社)「『なぜ?』から始める現代アート」(NHK出版新書)。(写真/稲垣 純也)