新店舗開店の際、必ず大行列ができる理由

 「金沢カレー」というジャンルがある。黒く濃厚なカレールーをごはんが隠れるようにのせ、千切りキャベツを横に添える。カツカレーにする場合はルーの上にカツをのせソースをかける。

 東京で食べることができる金沢カレーチェーン店の代表格が「ゴーゴーカレー」である。2011年12月時点で全国39店舗。チェーン運営母体は株式会社ゴーゴーシステムだ。

 以前、日経トレンディ本誌のカレーチェーン選手権でルー部門、ライス部門、カツ部門で3冠を達成したことがあり、その記事を読んで私もゴーゴーカレーに通うようになった。B級グルメ系では私にとっては外せない独特の味である。

 さて、このゴーゴーカレーには企業として面白い長所がある。新店舗が開店するときに、周囲がびっくりするぐらい長い行列ができるのだ。そのことで開店時に近所の人々はゴーゴーカレーを知り来店し、やがて固定客になるという好循環を生んでいる。

 昨年11月、私の事務所の近くにゴーゴーカレー代々木駅前スタジアム店が開店した。そのお陰でゴーゴーシステムの回転行列の作り方をプロのコンサルタントの視点から観察する機会に恵まれた。もちろん外部からの観察なので、彼らが持つノウハウの一部しかカバーしきれてはいないと思うが、それを私なりに整理して紹介したい。

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 実際に代々木駅前スタジアム店(代々木駅前に野球場はないが、なぜスタジアムかというと、社長が松井秀喜選手の熱烈なファンであるためである)開店当日の11月25日には、写真のように、お店から山手線の高架下を超えて踏み切りのあたりまで伸びる長い開店行列が完成した。行列に並ぶ顧客の目当ては開店名物の「先着555名限定、全品55円」のキャンペーン価格である。

 ゴーゴーカレーの通常メニューでは普通のカレー1杯500円からカツカレーの一番大きいサイズの950円までの品ぞろえになるのだが、開店時にはこれがすべて55円になるのである。ちなみに、通常営業時には特別メニューとしてその上にメジャーカレー、チャンピオンカレーというてんこ盛りメニューもあるが、代々木駅前スタジアム店開店時にはこれは提供されていなかった。

 また、ゴーゴーカレーという店名の通り、社長は55という数字に並々ならぬこだわりを持っており、55円の価格設定もさることながら、開店時間も11時55分に設定されている。実はこのことも開店行列のノウハウのひとつになっているのだが、それについては後述させていただきたい。

 55円のカツカレーは当然原価割れの出血サービスだ。しかし、それだけで大行列が作れるほど世の中は甘くはない。開店当日に行列を作るため、それを支えるいくつかの工夫をゴーゴーカレーは行っている。

 まず特徴的なことは、開店するかなり前からその告知が行われていることだ。それは店舗改装当初にまで遡る。

 10月下旬、新規開店の約1カ月前に閉店した餃子屋の店舗を改装する工事が始まった。私を含め通行人は、次に出来るお店がどんなお店か、ちょっと興味を持っている。普通のチェーン店であればかなり改装が進んだ後で看板を出し、それで初めて「ああ牛角が入るんだ」とか「ここはローソンができるんだな」と気付くのだが、ゴーゴーカレーの場合はちょっと違う。

 店舗の改装の初めにまず、店舗の外装を黄色いペンキで塗りたくるのである。このまっ黄色の外見がゴーゴーカレーのコーポレートアイデンティティでもある。何よりも最初にお店を黄色く塗ることで、最初に「ここにゴーゴーカレーができますよ!」と宣言をするのだ。そしてペンキが乾くと店先に、「ゴーゴーカレー、11月25日開店!」と告知をするのである。

 正直、最初にこの貼り紙を見たときは、「ずいぶん先の話だな」と思ったものである。しかし、それから1カ月間ずっと出勤途中の道でゴーゴーカレーが「これから出店するのだ!」とアピールを続けている。

 つまり、まず外装の色だけ塗り、それから時間がかかる内装設計やリフォーム、厨房設備の搬入作業などを行うという、通常とは違う開店準備手順に、行列を作るための最初のノウハウがあるように思えるのだ。