今回は「パラサイト・シングル」「格差社会」「婚活」などの言葉を世に送り出した、中央大学文学部教授で社会学者の山田昌弘先生に対談にお越し頂きました。人口の半数以上が50歳以上という未曽有の超高齢社会に突入している日本。晩婚化・晩産化が進み、婚活という言葉が流行語になるなか、若者の結婚観や消費感覚はどう変化してきているのか。日本とアジアとの比較を交えながら、お話しさせていただきました。

原田 今、「モテキ」という映画が若者の間でヒットしています。三十路近くのモテない派遣社員の藤本幸世が、ある日突然、過去の知り合いの女の子から次々と連絡が入り、「モテ期」が始まる。でも、結果的には不器用でなかなかうまくいかない、世の中そんなに甘くない、といった内容です。

 山田先生の「婚活」という言葉通り、若者たちの恋愛が複雑で難しくなっていて、だからこそこういう内容に共感する若者が多いのだと思います。

 そう言えば、最近、女性と付き合った経験がなかった30近辺の男性から、「ついに彼女ができた」と報告を受けました。相手は中国人女性だそうで、婚活サイト で出会ったとのこと。若者同士の結婚がなかなか難しくなるなか、アジアにパートナーの活路を見出そ うとする動きが見られます。山田先生は国際結婚の調査をされていますが、日本人男性とアジア人女性の結婚は増えているのでしょうか?

山田 日本人男性とアジア人女性のカップルは、ここ10年ほど横ばいです。その男性のような、日本人男性と中国人女性との結婚は多少増えていますが、かつて多かったフィリピン女性と日本人男性の結婚は減少している。日本人男性とアジア人女性カップルの総数に大きな変化はないが、逆に日本人女性とアジア人男性の結婚は増加傾向にあります。

原田 日本人女性と結婚するアジア男性とは、具体的にどこの国の人が多いのでしょうか?

山田 経済発展の著しい国です。私が調査に行っているのは香港。共同研究を行っているトルコやタイでも多い。今後はシンガポール・ベトナムでも調査を行う予定です。

日本人女性はアジアでなぜモテる?

原田 日本人女性とアジア人男性の結婚が増えているのはなぜでしょう?

山田 昌弘(やまだ・まさひろ)中央大学文学部教授。1957年東京都生まれ。1986年東京大学大学院社会学研究科博士程単位取得退学。専門は家族社会学、感情社会学、ジェンダー論。「パラサイト・シングル」、「格差社会」という言葉を一般に浸透させたことでも知られる。著書に『「婚活」現象の社会学』(共著、山田昌弘編集、東洋経済新報社)、『幸福論――“生きづらい”時代の社会学』(共訳、作品社)、『少子社会日本』(岩波新書)、『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)、『希望格差社会』(筑摩書房)ほか多数。
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山田 理由はいくつかありますが、第一に日本人女性はすごくモテるというのがあります。

原田 日本人女性がモテる背景には何があるのでしょうか?

原田 日本人の若い女性のおしゃれな部分がいいのだとか。単に服がおしゃれというだけでなく、毎日コーディネートを変えるとか、ムダ毛処理をしっかりするといった点も含め、日本人女性には洗練されたイメージがあるようです。香港では日本の女性ファッション誌の現地版が売れています。ファッション雑誌から抜け出したような女性が、日本から来るように現地の男性は感じるわけです。

原田 博報堂若者生活研究室では、中国でも若者研究及びマーケティング活動支援を行っています。日本の雑誌はある程度の中国の都市部ならどこのコンビニでも置いてあります。しかし、中国の女性、特に内陸都市の女性たちは日本のファッション誌を読んでいるわりに、自分のファッションに取り入れ切れていないという印象。確かに日本女性のほうが雑誌のイメージに近く、魅力的に見えるのかもしれません。

山田 あとは、やはりアニメの力は大きい。日本のアニメをきっかけに、日本人女性に興味を抱くアジア人男性は少なくないようです。中央大学に来る留学生たちに、なぜ米国や英国ではなく日本に留学したのかを尋ねると、「日本のアニメが好きだから」という理由が圧倒的に多い。逆に言えば、それ以外の理由ではなかなか日本に来なくなっている。いまや「日本文学が好きで留学してきた」という外国人は特殊です。

原田 中国でも、アニメは日本のものが圧倒的に人気です。一方、歌手やドラマは、日本のものも人気がなくはないが、ここ数年は韓国が強くなってきているし、台湾や香港のものはもともと強い。さらに中国産もレベルを上げてきている。「日本の存在感がアニメ以外は落ちている」という印象です。日本文化を一人で引っ張り続けるアニメが、日本人女性のイメージ向上にも寄与しているのですね。

山田 もう1つ、日本人女性がモテる理由として、「表面的な自己主張が弱く、うまく男性を立てる技術に優れている」という話を聞きます。もちろん個人差はあるが、諸外国と比較すると傾向としてそう言えるようです。強く自己主張するのではなく、相手の男性に主導権を取らせるように見せて、やんわりと自分の意見を通す。そういった技術に日本人女性は長けているそうです。

原田 確かに中国の女性を見ていると、感情表現がストレートです。「相手の感情が分かりやすくてラク」と言う男性もいるが、「あまりに強くて激しいので、疲れちゃう」という男性が増えているのかもしれません。国が発展して豊かになるにつれ、そうした発展途上の直接的な激しさではなく、日本女性のようなもう少し間接的なコミュニケーションを求める男性が増えるのは、理に叶っているのかもしれません。アジア男性が日本人女性を求める理由は分かりましたが、逆に日本人女性は、なぜアジア人男性を選ぶようになっているのでしょうか?