博報堂若者生活研究室のアナリスト・原田曜平です。
 私は、「博報堂若者生活研究室」という組織で、日本と中国を中心とするアジアの若者研究・マーケティングを続けています(「若者研」の活動についてはこちらをご覧ください)。  さて、そんな私には、若者に関する知見をお持ちで、いつも教えを頂いているたくさんの有識者の知り合いがいます。ある方は学者さんであったり、メーカーで若者向けの商品開発をされている方であったり、マーケッターであったり、若者から支持の厚いカリスマブロガーさんや美容師さんであったり、アパレルブランドやショップを立ち上げている方であったり、実に様々な業界の方々がいらっしゃいます。

 これらの皆様と、日々、意見交換や情報交換をさせて頂くことで、若者自身から得る生の情報を構造的に把握できるように努めています。この日経トレンディネットの連載上でも、若者に対する知見をお持ちのいろいろな方と対談させて頂き、お互いの知見をぶつけ合い、それを読者の皆様に披露させて頂いていきたいと思っています。

 対談シリーズの第1回は、若者研究の大先輩であり、「草食男子」という言葉の生みの親である深澤真紀さんと「草食男子の現在と今後」についてお話させていただきます。

原田 草食男子という言葉がつくられてから現在まで、どのような変化があったでしょうか。

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深澤 私が最初に「草食男子」と名付けたのは2006年でした。「今どきの若い男性は、上の世代よりも、いい部分や面白い部分がたくさんある」という思いから、「リスペクト男子」とか「しらふ男子」と名付けたなかのひとつが「草食男子」だったんです(「草食男子世代」光文社知恵の森文庫)。今ではネガティブな意味で使われることも多いのですが、もともとは「恋愛やセックスにガツガツしていなくて、男女の友情も築ける存在」という、いい意味で名付けたんですね。

 最初の2年くらいは「そんな男はいないし、ありえない」と言われていました。それがブレイクした理由は2つです。1つは女性誌が「私たちがモテない理由は草食男子です」と一気に取り上げるようになったこと。もう1つは車が売れなくて、マスコミや広告代理店が犯人探しをしたところ「草食男子が物を買わないせいだ!」と。つまり、命名者である私の意図とはまったく反対の意味で流通するようになってしまいました。

 さらに私がメディアで顔出しするようになったら、「もてない中年女である深澤が、若い男に相手にされなかったから、草食男子と名付けて恨みをはらしている」と言われたり。そう言いたい気持ちはよくわかるのですが(笑)、いい意味で名付けているので誤解なんですよね。ただ結果としては、「上の世代や女性に対して、ていのいい若者や男性叩きの言葉を与えてしまったな」という反省もあり、申し訳なく思っています。

 アジアからも2008年くらいから取材が来るようになり、台湾の雑誌や韓国の報道番組で特集が組まれるなど、草食男とか食草男という言葉が流行語になりました(関連記事)。

原田 いろいろ研究している中の仮説ですが、草食男子が欧米も含めて世界中にでてきているように感じています。ある雑誌で「中国の若者が草食化している」と書いたら中国国内が騒然としました。経済は伸びていますが、給与所得はあまり上がっていない。婚活も熱心ですがうまくいかない。実は日本の若者のように元気がなくて、共感する人が多いみたいです。アメリカでも、徐々に若者たちに草食化の傾向が見られ始めているようで、例えば、以前はどでかい車しか売れなかったアメリカで、若者たちに段々コンパクトカーも売れ始めるようになってきています。世界に言葉が広がっているという前提には、人間世界に根本になにかがあったのだと思うのですが。

深澤 海外からの取材には3つの波がありました。1つめは「自分たちの国でも増えている」というアジアから。2つめは欧米から「やっぱり日本男性はおかしい」というステレオタイプな批判があって、「そうではないんだ」と説明したり。最後に、欧米の女性ジャーナリストやオタクジャーナリストがやってきて、「先進国でありながら、草食のような生き方が許されるのは、マッチョな欧米社会からするとうらやましい」と。欧米全体が草食化するとまでは思いませんが、彼らを洗練された生き方だと思う人たちも少なくないようです。

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