人間誰しも美しく生活したいと思っている。それは見た目だけじゃない。中身から美しくということだ。
 それはクルマも同じである。今どきクルマを実用性だけで買う人はいない。だったらトラックやバンでいい。そうではなく、乗る人の身体はもちろん、時には頭や心まで気持ち良くしてくれるから買うのである。それはスタイリングであり、走りであり、質感であり、ブランド性であり、知的興奮を誘うエピソードである。クルマはある意味、五感で味わうプロダクトだ。だから楽しくも難しいのである。
 というわけでこの“ビューティフルカー”では私、小沢が美しさや知的エピソードを中心にクルマを語っていこうと思う。

【コンセプト】「設計素生」という考え方

ダイハツ「ミラ イース」
[画像のクリックで拡大表示]

 「なにが変わったって…考え方であり、組織ですよ」(担当エンジニア)。

 久々、衝撃である。といってもクルマそのものではない。むろん本体もすごいが、それ以上に作り方であり、手法の改革度がすごい。

 というのも軽自動車初のモード燃費30km/L!(※JC08モード。10・15モードでは32km/L!!)と同時に、ベース車80万円以下の低価格を実現したダイハツ工業の新型「ミラ イース」。

 ハイブリッドなし、しかも燃費じゃリッターカーよりツライと言われている軽での達成だけに、ついつい今までにない新技術の投入か? と思いがちだがそうじゃない。

 というのも「性能アップ」と「コストダウン」を同時にやってのけるためには飛び道具は不向き。ハイブリッドがいい例だが、既存システムに高いモーターと電池が加わり、低燃費は達成できても値段はどうしても高くなる。トヨタの2モーター式ならばざっくりプラス50~60万円、ホンダの1モーター式でもプラス40万円はかかる。だが、今回のダイハツでそれは無理。結果迫られたのは従来技術の集大成だ。

 開発のきっかけは2009年の東京モーターショー登場のコンセプトカー「イース」だが、あれは「3ドアボディー」でハイテク樹脂ガラスや樹脂ボンネットやフェンダーを多用した高額商品。今回の「ミラ イース」とは全然違う。

2009年発表のコンセプトカー「イース(e:S)」
[画像のクリックで拡大表示]