ヨーロッパでネット上でのプライバシーに関する議論が徐々に盛り上がっていることをご存じだろうか。“忘れてもらう権利”(right to be forgotten)を巡る議論である。

“忘れてもらう権利”とは

 そもそもネット上での“忘れてもらう権利”とは何であろうか。

 一度ネット上に個人情報が出ると、多くの場合それはネット上に残り続ける。例えばネット上のショップで買い物などをした際にメールアドレスなどの個人情報を登録すると、延々とメールが送られてくることが多い。しかし、そうした事態は個人のプライバシーを侵害しており、個人はネット上で自分に関する情報を削除させる権利を有するという考え方である。

 この“忘れてもらう権利”は、ヨーロッパでは当たり前のように主張される場合が多い。

 例えばドイツでは、1990年に殺人事件を起こした2人がウィキペディアに対して、その2人(実名)に関する既述を削除するよう裁判所に訴え出ている。ドイツの法制上は、罪を犯してもそれを償えば犯罪歴は公にしなくても良いようであり、その2人は、犯罪を犯した者でもプライバシーの権利を有すると主張している。

 スペインの政府組織である情報保護庁(Data Protection Agency)はグーグルに対して、苦情の申し立てを行った90人の国民に関するネット上の情報を検索結果に表示しないよう命じた(この命令の可否については裁判所で争われている最中)。

 ちなみにグーグルは、ストリート・ビューのために集めた写真がプライバシーを侵害しているとして、ドイツ、スイス、チェコなどの国で訴訟を起こされている。

 こうした動きはヨーロッパの個別の国にとどまらない。既にEUの情報保護指令(data protection directive)の下では、企業と契約する際に個人情報を提示した個人は、企業がそのデータを保管することへの許諾を取り消す権利を有する。また、今年の秋からは、“忘れてもらう権利”に関する新たな規制についての検討も始めるようである。ちなみに、EUが行った世論調査では90%の人が新たな規制の導入に賛成している。

EU本部なども“忘れてもらう権利”を前向きに検討する。画像はドイツ語サイト
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