30代、40代のビジネスパーソンを中心に、糖尿病や高血圧、メタボ、皮膚トラブルなどについて専門家に解説をしてもらう連載の最初のテーマは、ビジネスパーソンがかかりやすい病気の一つ、糖尿病。国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部長 野田光彦先生に、糖尿病および予防について、解説してもらう。その第4回。今回は、糖尿病にかかってしまったら、どのような治療を行うのか、糖尿病の薬物治療に関する最近の考え方について。

 糖尿病について初めて記載された書物は、紀元前1550年頃に書かれたという『パピルス・エベルス』にさかのぼるとされます。また、紀元2世紀のローマ帝国時代には、カッパドキア(現在トルコ領)生まれの医師アレタイオスや、マルクス・アウレリウス帝の侍医であったガレノスが、それぞれ糖尿病と考えられる病気の症状と予後について詳細に記載しています。ガレノスは、糖尿病は腎臓の病気であるとしていますが、両者ともその背景には胃の異常(食欲)があると推察しています。

 その後長らく糖尿病は「腎臓の病気」であると考えられた時代が続き、糖尿病の発症メカニズムの主座といえる膵臓の、血糖値の制御への役割の解明は、19世紀の末まで待たねばなりませんでした。すなわち、1889年にミンコフスキーとメーリングが、膵臓の全摘出によって犬が糖尿病になることを報告し、そして1921年に、カナダ・トロント大学のバンティングとベストによって犬の膵臓の抽出液からが血糖値を下げる物質、つまり後にインスリンと命名される物質が発見されたのです。これは、膵臓摘出犬での最初の成功ののち、6カ月も経たない翌1922年に早くもトンプソン少年に臨床応用され、劇的な効果を収め、彼は回復に至りました。ときにトンプソン少年、14歳のみぎりでした。ここに初めて重症糖尿病の生命を救いうる治療が確立されたのです。と同時に、現在の糖尿病医療を支えるさまざまな発見、経口血糖降下薬(内服で血糖値に効果のある薬剤)の誕生、そして、より使いやすいインスリン注射薬への研究のスタートが切って落とされたのです。

 2型糖尿病の治療で主に使用される経口血糖降下薬に関しては、1950年代から開発が進み、わが国では特に1990年代以降、新しい効果をもつ薬剤が次々と発売されています。現時点で大きく6種類に分類される20を超す薬剤が使用されています。

 第1回~3回までは、主に糖尿病と診断されていない方への予防と早期発見について述べてきました。今回はそこから一歩踏み込んで、糖尿病の薬物治療に関する最近の考え方や新しいトピックを紹介していきたいと思います。