客船とクルーズ船の違いとは何か?

この夏に「シルバー・スピリッツ」に乗船して地中海を周遊した筆者と船体(画像クリックで拡大)

 クルーズ船とはなにか。整理しておこう。

 まず、客船とクルーズ船の違いだ。客船とは文字通り、客を港から港へと輸送する“海上旅客運送”のことだ。輸送が主目的だから快適性より、むしろスピードを優先する。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、欧州各国が国威をかけて大西洋横断の速さを競った時代もあった。いわゆる「オーシャンライナー」と呼ばれる遠洋定期航路に就いた旅客船や貨物船がそれで、1912年に沈没した「タイタニック号」は、その旅客船の象徴と言える。スピードを競い高馬力エンジンを搭載するため、パブリックスペースは制限され、揺れも伴った。しかも20世紀初頭に全盛を誇ったオーシャンライナーは、航空機の登場にともない衰退。1957年には、大西洋の利用率が客船と航空機がほぼ同数にまでなった。その後1960年代以降ジェット旅客機のボーイング707の就航で客船の時代は終焉した。

 一方、クルーズ船が登場するのは、オーシャンライナーより後の時代のこと。クルーズ船は、船旅自体を楽しむのが主目的。だからスピードよりも快適性を優先。エンジンも翌日に次の港まで航行できる程度でいいから、乗客に優しい設計になっている。よって一般的なクルーズ船はレストランやシアターなどのパブリックスペースが充実。客室も広く、ラグジュアリーシップの中には全室オーシャンビューのスイートというものもある。

 現在、世界的にブームになっているのは、このようなクルーズ船のことだ。しかし、こうしたクルーズ船のスタイルが誕生したのはそれほど古い話ではない。私見だが、ブームは先のクルーズ人口が急激に伸びたこの20年で区切ってもいいくらいだと思っている。

 先ごろ、筆者は「シルバーシー・クルーズ」社の「シルバー・スピリット」に乗船した。これぞ現在のクルーズブームの象徴と言える。同社の創立は1992年。6隻のクルーズ船を擁し“世界航路”を結び、6星の世界No.1の小型クルーズ船として、多くのアワードにも輝いている。