本コラムでは流行や社会現象の裏にあるメカニズムに光をあてていく。今回はiPhoneとアンドロイド携帯の競争における「iPod touch」の微妙な立場をとりあげたい。

 アップル社のスティーブ・ジョブズがかねてから「iPhoneの補助輪」だと語ってきたのがiPod touchである。

iPod touch第4世代(画像クリックで拡大)

 外見はiPhoneとよく似ていて、最新の第4世代は(1)電話がない、(2)GPSがないということ以外はほぼiPhoneと同じことができる。つまり、音楽やビデオクリップ、写真や動画撮影を楽しめるだけでなく、iPhoneアプリをダウンロードしたり、ゲームしたり、電子書籍を読んだり、無線LAN経由でインターネットにつながったり、メールをチェックしたりと、およそスマートフォンユーザーがやりたいことは、iPod touchでも大体できるのだ。iPadと違って、iPod touchなら産経新聞も無料で購読できる。価格も8GBで2万900円からと、iPhoneよりも手ごろである。

 スティーブ・ジョブズが「補助輪」と呼んだのは、iPod touchが、「次のiPhoneユーザーとなる顧客層を生み出してくれる」という意味だった。スマートフォンの購入を検討している携帯ユーザーや、まだ金銭的にスマートフォンを所有する余裕がないティーンエイジャーが最初にiPod touchを購入することで、スマートフォンを疑似体験できるというわけだ。

 この仕組みは、これまで非常にうまく機能していた。アップルは部分的にしか商品の販売台数を公表しないが、これまで部分的に公表してきた出荷数値では、iPhoneとiPod touchの販売台数は一貫して、3:2の比率で推移してきた。

図1:iPhoneとiPod touchの公表出荷台数(画像クリックで拡大)