夕食の時間が遅いだけで、1年で2.4kg余計に太る? 裏技「分食」が有効

――体臭まで脂肪が原因なのですか。では、脂肪を効率良く減らすためにはどうすればいいでしょう?

藤井:肥満対策についても最近、注目の研究成果が続々と得られています。キーワードとなるのは「時間栄養学」です。

 時間栄養学から得られる知見を一言で説明するなら、「1日の摂取カロリーや運動量などが変わらなくても、食事をする時間帯によって太り方が変わってしまう」というものです。

 例えば、「BMAL1」という、体内の組織に存在するたんぱく質に関する研究があります。このたんぱく質は、摂取したエネルギーを脂肪細胞に送り込む働きをするとされているのですが、これの量が、時間帯によって変動することがわかってきたのです。

 あくまでマウスを使った実験データですが、このたんぱく質は14時の時点ではほぼゼロですが、夜になればなるほど増えていき、午前2時ごろに量が最大となります。19時時点と比べても、午前2時時点では4倍も多いのです。つまり、同じ量の食事をしたとしても、それが19時か午前2時かによって、脂肪のつきやすさに大差があることが予測できます。

BMAL1の量(相対値)

脂肪合成にかかわる
たんぱく質は夜に増える

マウスの脂肪組織中のBMAL1量を測定し、BMAL1量が一番多いときを100%とし、時間ごとの変化を見た。結果、BMAL1量は午前2時をピークとしてその後下がり、午後2時に一番少なかった。(データ:日本大学、榛葉准教授)

藤井:もう一つ、人間を対象とした実験データにも注目のものがあります。これは昨年の肥満学会で花王が発表したデータですが、同じ量の食事を19時に食べた場合と、22時に食べた場合で、1日のエネルギー消費量が50kcalも違ったということです。

 これは、呼気の成分などから人間の1日の代謝量を正確に測定できる装置を使い、食事量や運動量などの条件をそろえて行った実験です。つまり、運動量と摂取カロリーが同じでも、「食事の時間帯」が変わるだけで、太り方が全く変わってくるということです。

 1日50kcalの差が1年間積み重なれば1万8000kcal以上。これは、脂肪に換算して約2.4kgに相当します。食べる量が同じでも、これだけ体重が変わってくる可能性があるのです。

遅い夕食だとエネルギーの消費が少なく太りやすい
「早い夕食」では、19時から就寝までのエネルギー消費量が高いが、「遅い夕食」では低かった。エネルギー消費量については、2回に分けて夕食を摂る「分食」(後述)でも「遅い夕食」と同様に低かった

実験の概要
平均40歳の男性8人が「遅い夕食」(22時に摂取)、「早い夕食」(19時に摂取)、「分食」(19時と22時に分けて摂取)の、3種の夕食パターンで過ごした。それぞれ、エネルギー消費量、インスリンの分泌量などを測定した。(データ:花王、第31回日本肥満学会にて発表)

――運動量が変わらなくても、ですか! それは、「食べてすぐ寝るのは良くない」ということでしょうか?

藤井:いいえ。少し前まではその理屈によって、「遅くに食事をしたのなら、そのぶん寝る時間を遅くすべき」とする考え方もありました。しかし、ダイエットという目的のためには、このやり方は望ましくありません。あえて寝る時間を遅くすれば睡眠不足になってしまいますが、睡眠科学の最新の知見によると、「睡眠時間が少ないと太る」ことがわかってきているのです。

 なぜかといえば、睡眠不足の人は、満腹になりにくいからです。人間の身体には、これが増えると満腹感を感じる「レプチン」というホルモンがありますが、睡眠不足の人はこのホルモンが減ってしまうというデータがあります。また逆に、食欲を昂進させるホルモンである「グレリン」は、睡眠不足であるほど増えます。「睡眠不足だと、つい食べ過ぎてしまう」メカニズムが人体にはあるのです。

 これまでの話をまとめれば、「夜遅くまで仕事をしてからラーメンを食べる」といった生活スタイルは、食べる量も増えるし、消費量も減ってしまうため、最悪のパターンだということになります。「夕食はあまり遅くない時間に摂る」「睡眠時間を十分に摂る」ことを心がけるべきでしょう。

睡眠不足で食欲が増す

30~60歳の男女1024人が対象。睡眠時間が少ない人は、満腹中枢に作用して食欲を抑えるレプチンの量が少なく(左)、逆に食欲を増進させるグレリンの量は多かった(右)。また、肥満の指標となる体格指数(BMI)も高かった。(データ:PLoS Med. 2004 Dec;1(3):e62. Epub 2004 Dec 7.を改変)

――仕事に追われているビジネスマンにはやや厳しい注文にも思えますが……

藤井:どうしても夕食の時間が遅くなってしまう人のために、一つ賢い方法があります。夕食を「2回に分けて摂る」ことです。本格的な夕食より前に、あまり遅くない時間に、少し腹を満たしておくのです。このやり方を「分食」と呼びます。

 分食を行っても、先ほどの実験で測定した1日の消費エネルギー量は、遅い時間に1回だけ食べる場合とあまり変わりません。しかしその裏で、消化において重要な働きをするホルモン「インスリン」の分泌量が、遅い夕食の場合と比べて抑えられることがわかっています。

 夕食が遅い場合、インスリンの分泌量は過剰になりやすいとされています。このホルモンには脂肪合成を促す働きもあるため、過剰分泌は肥満につながる要因です。分食にはこれを防ぐ意味があるのです。

早めに夕食の一部を食べると太りにくい
「遅い夕食」では、22時の夕食後のインスリン分泌量が飛び抜けて高かった。一方、「分食」にすると、19時、22時の2回の夕食後のインスリン分泌量が抑えられた