前回(“ネット発音楽”で新潮流! 著作権の「部分信託」で何が変わる?)のデッドボールP曰く「ネットではカスラックと呼ばれているくらいイメージが悪い」というJASRAC。だったら他の著作権管理事業者を選んでも良かったはずだ。

 2001年10月に施行された著作権等管理事業法で、それまでJASRACが独占していた音楽著作権の管理事業に、民間の参入が可能になった。現在はイーライセンス(e-license)、ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)など複数の事業者がある。それに合わせてJASRACの信託契約約款が更新され、著作者は各支分権ごと(前回記事参照))に管理事業者を選べるようになった。今回の「部分信託」も、この10年前からある仕組みを利用したものだ。

 ところがカラオケの著作権使用料というと、未だにJASRACの話題しか上がってこない。それはカラオケから著作権使用料を徴収できる事業者が、事実上JASRAC以外にないからだ。

 通信カラオケに関わる著作権は3つある。演奏データを端末に送信する「公衆送信権」、そのデータを再生機器にコピーする「複製権」、そしてカラオケ店がその規模に応じて支払う「演奏権」。このうちカラオケ店からの著作権使用料徴収は、未だ人海戦術が頼りだという。それができる人員規模を持つ組織は、今のところJASRACしかない。したがって権利者がカラオケから著作権使用料を得ようとすれば、JASRACの一択ということになる。

 ところがJASRACを利用しようとするとネットコミュニティの反発を買う。それでボカロ曲のカラオケと著作権使用料の件も長い間膠着(こうちゃく)状態に陥っていた。そのムードを緩和する流れを作ったのは、前述のデッドボールPとJASRACの当時常務理事で現理事長の菅原瑞夫氏が出演したニコニコ生放送だった。

公式番組も増えているニコニコ生放送。政治家なども生出演して話題となっている(画像クリックで拡大)

 サービスが始まって間もない頃のニコニコ動画は、JASRACと利用許諾契約を結んでいなかったため管理楽曲の違法利用状態が続いていた。2008年4月に契約が成立してからは、菅原氏はたびたびニコニコ生放送に出演するようになり、著作権管理の仕組みをネットの視聴者に説明し続けた。

 結果、ニコニコ動画を中心に活躍する作家たちが自らの楽曲をJASRACに部分信託をするという新しい動きが生まれた。ただ、問題もないわけではない。CDが売れず、テレビやラジオも勢いを失いつつある中で、音楽体験の主流はネットメディアでの視聴に移りつつある。まさにボカロ曲はそうした潮流から出てきた音楽だ。ところが部分信託が可能にしたのは「インタラクティブ配信」を外し、ネットで自由に利用するため著作権使用料がかからないようにすることだった。つまりネットでいくら使われても、作詞・作曲家は著作権使用料の分配は受けられない。

JASRACのホームページでは、作品情報なども検索できる。http://www.jasrac.or.jp/(画像クリックで拡大)

 これは今回のカラオケ問題同様、いずれネットでの利用状況に沿った方法で解決しなければならないのではないか。今回のカラオケ問題で露呈したネット上の著作権の課題は、将来どうやって解決されるべきなのか。JASRACのイメージ、ニコ生出演の経緯も含めて、JASRACの菅原瑞夫理事長に話を聞いた。