「月々これくらいのローンなら大丈夫」という落とし穴

 前述の通り中長期的視野と現在と未来のバランス感覚を持てば、人生のほとんどのイベントを乗り越えられるわけですが、だからといって、自分や家族の欲求の全てを満たすのは容易ではありません。実際にはほとんど全てといっていいくらいの人が、さまざまな局面で自分の人生の経済的限界を考えずに、重大な判断をして、自ら窮地に陥っていきます。

 例えば、下記のような課題を考える場面です。

⇒ 自分が購入できるマンションは、おおよそ『?』万円くらいだろう
⇒ 次に買う車は、『?』万円くらいまでが妥当だろう
⇒ 今年の家族旅行の予算は、『?』万円くらいだろう

 当たり前ですが、1億円以上するマンションを購入し、高級外車を乗り回し、セレブ感漂うリゾートホテルで1泊数十万円のスイートルームに家族で長期滞在する人は、そう多くはありません。そのような素敵なマンションや車、ホテルがあることは知っていても、自分とは無縁のものとして考えるのが普通だと思います。

 これは、それらの支払い総額が「自分には明らかに大きすぎる」と直感する、つまり、身の丈に合っていないことを感じる場面においては、それらの物欲をやり過ごす冷静な判断力を心の中で維持できるからです。

 でも、人は、もう少し身近に感じる場面、言いかえれば、「これ、買えるかも!」と感じる場面においては、その判断力を失いがちになります。

 仕事の場においては冷静沈着に物事を判断し、よい成果を残している人たちも、プライベートではなぜか目の前のものが本当に欲しいとその判断力を失い、『買える理由』を必死になって探し始めるのです。

 例えば、住宅ローンの毎月の支払い金額を現在の(賃貸マンションの)家賃と比べて「同じくらいだから大丈夫なはずだ」と単純に考えてしまったり、自動車のローンを組む時に、その後継続的に発生する駐車場代や税金、損害保険料やガソリン代などの費用を軽視して「このくらいのローンなら軽い」と考えてしまったりするわけです。

 つまり、『本当に欲しい』ものが目の前にあると、近未来のお財布事情だけで考えてしまったり、極端に視野が狭くなったりしがちなのです。

 世の中には、入居して10年がたち、新築の輝きを失い始めてから、自分たちのマンション購入プランの欠陥に気付いて青ざめている夫婦もたくさんいます。また、欲しかった車を背伸びして購入した後に、ガソリン代節約のために、車に乗るのを控える人もいます。

 「どうせなら、いいものが欲しい」と背伸びする傾向がある人は要注意です。もちろん、いいものが欲しいと思うことは悪いことではありませんが、大切なのはその購入を検討する際に、中長期的視野を持っているか否か、という事です。今月、来月の収支や、今まで貯めた貯金だけをみて考えるのではなく、10年後、20年後の自分たちの姿を思い浮かべて、判断する事が大切なのです。

 それができる人は、人生のあらゆる場面で「身の丈に合った判断」をしていくことになり、結果的にその人生に幕を引くまで財布からお金が尽きることがない、安心した生活を送ることになるのです。

住宅、クルマ、子供の教育資金…10年後、20年後を見据えたライフプランが重要(画像クリックで拡大)