「オタリーマン」がいるのなら、オタク官僚=オタクラートがいたっていいはずだ。32歳の経済産業省職員にして自称アニオタの三原龍太郎が、日本産コンテンツの海外展開を中心に、クール・ジャパンのあり方を考える。ただし、ここでの内容は筆者個人の見解であり、筆者の所属する経済産業省の見解ではない。筆者の「本業」もアニメとは無関係なのである。

 前回より引き続き、アニメエキスポ2010にいる。

 私は、アニメエキスポ会場近くにあるフィゲロア・ホテル(Figueroa Hotel)のプールサイドの一画で行われた、日米アニメファンの交流会「日本語でおk」に参加していた。この会は、日本のボーカロイド文化を海外に紹介する活動を長年続けてきた正木良明氏が、毎年アニメエキスポで企画している集まり。参加は自由で、軽食と飲物を囲んで日本語・英語のちゃんぽんでオタク話に花を咲かせ、日本と米国のオタク同士で親睦を深めようとするものである。今回は30人以上もの日米アニメファンが集まり、盛況だった。

 ボーカロイドや正木氏の活動、「日本語でおk」会の詳細については、別の機会に改めて書きたいと思う。むしろここで私が驚いたのは、参加していた米国のアニメファンの中にファンサバー(日本アニメに自前の字幕をつけて違法にアップロードする人。アップされた動画が「ファンサブ」。前回記事参照)が何人かいたことだった。会の冒頭で各自が自己紹介をすることになったのだが、名前、出身州(都市)、好きなアニメなどに加えて、あまり悪びれる様子なく「ファンサバーです」「ファンサブやってました」と公言していた人間が3~4人はいた。(注1)

「日本語でおk会」に集まったアニメファンたちと筆者

 なかでもとりわけ目を引いたのは、揃いのTシャツを着た大学生風の二人組だった。彼らはロサンゼルスエリアでは結構名の知れたファンサバーだったようで、両人ともアジア系の風貌で、日本語と英語を自在に使いこなしていた。どちらの言葉も余りに流暢だったので、アメリカに住んでいる日本人なのか、はたまた日系アメリカ人なのか最後までわからなかったほどだ。

 揃いのTシャツは、おそらくファンサバーであることを誇示するためのものと思われた。黒地に白文字をあしらったもので、前には何かのコンピューター言語らしき文字列が書かれており、そして背中には、(非常に意訳するとおそらく)「かかってこいや!」という趣旨の、挑戦的な短文が書かれていた。

 せっかくの機会(!)なので、彼らに話を聞いてみることにした。なぜアメリカではこんなにファンサブがはびこっているか? その理由は何だと思うか? という私の問いに対して、「最近はもうあまりファンサブはやってないんだけどね…」と若干強めのケレン味を漂わせつつ、彼らは以下のように答えた。

 「結局、日本で放映されたアニメがこっちですぐに観られない、ということに尽きるんだよ。こっちの企業はすぐにアニメを提供なんかしてくれない。でも、俺達はできる。タイムラグを大幅に短縮しているという点において、俺たちはアメリカのアニメマーケットに貢献しているのさ。たとえそれが違法行為であってもね。」

 「アメリカのアニメマーケットの現状が完全なものであり、アメリカのアニメ消費者にとって最良の状態にあるとは全く思わない。企業の側にそれを変える気がないなら、俺たちで変えるまでさ。」

 「日本語でおk」会からの帰途、共に調査に来ていたハーバードビジネススクール日本リサーチセンターの山崎繭加氏がぼそりとつぶやいた一言が印象的だった。

 「あの子たち、生意気でしたね(笑)」

 笑いながら言っていたが、目は笑っていなかった…

(注1)正木氏主宰の「日本語でおk」会は純粋にアニメファン同士の交流を目的とするものであり、ファンサブ活動とは何ら関係がなく、またそれを奨励するものでもありません。