ヤマト屋が市場のすき間を埋めるバッグ作りのためにやっていることは、女性とのコミュニケーション、要望を反映した商品作り、それを売り込む社長の“付属ストーリー”作りの3つだ。一見すると「これがなぜ?」というバッグが付属ストーリーのおかげで、予想外のヒット商品となることもしばしばある。

 “付属ストーリー”とは、どんなときに、どう役に立つかを女性目線で語る「シーンの提案」である。商品は、スペックよりも、「ああ、そういえば」と思い当たる用途を、(こじつけでも)いかに開発するか、使うシーンをどれだけライフスタイルの中に想像させることができるかにかかっている。シーン提案は今や通販の王道だ。どんなバッグを、どんなストーリーで売るのか? そもそもネタはどこで仕入れるのか?

※本編は、「テレビ通販のバッグ」後編です。初めてご覧になる方は、前編からお読みになることをお勧めします。

「これが?」という商品が “付属のストーリー”でバンバン売れる

 「なくても困らない、でもあったらいいなあ、というバッグを作る」と話すヤマト屋の正田誠社長。女性はバッグの10個や20個はゆうに持っている。すでに飽和状態にあるタンスの中の“すき間”をねらうのだ。新たに買うバッグは、形も大きさも機能も、基本的に「持っていなくても済むもの」といえる。

 例えばこの「ちょい持ちバッグ」。ネーミング通り、「ちょこっと持つのに使うバッグ」で、コンセプトは「バスに10分乗って埼玉の大宮駅前にある高島屋へ行くときのバッグ」。メーカーとしても「めちゃめちゃ“すき間”、これが?(本当に売れるのか)という商品」(正田社長)だが、予想外のヒット商品となった。

「女性は『ちょこっと』が大好きなんです」(ヤマト屋 正田誠社長)。写真は「ちょい持ちバッグ」(6930円)(画像クリックで拡大)

 「中に入れるのは、ケータイ、お財布、口紅とコンパクトぐらい。ポイントは『バスに乗って百貨店へ行くとき』です。これが『電車に乗って銀座』ではない。ちょこっとといっても、エプロンをつけたまま近所のお惣菜屋さんに買いに行くのでもない」(同)

 「惣菜屋にエプロンをつけたまま買いに行く」シーンは、今なら「ジャージでコンビニ」のニュアンスだろうが、別にエコバッグにケータイと財布を入れて高島屋に行ってもいいわけですよ。だが、「ちょこっと持つバッグって、そういえば私持ってなかった……、あったら便利かも!」と思わせたい。そこでテレビ通販の商品紹介では「ちょこっと使える」用途をいくつも披露し、潜在的な欲望を掘り起こす。こんな具合だ。