秋の味覚が届くようになった。デパ地下には各地からの海産物、野菜、果物や食欲をそそる惣菜などが並ぶ。この夏の盛暑で食の細かった人も、しのぎやすくなると食欲が旺盛になり、ついつい食べ過ぎて胸焼け、げっぷなどに悩まされることも少なくないようである。

 これらの症状がなかなか治まらず、週二回以上、胸焼けを起こし、胸も痛くなるようであれば胃食道逆流症の可能性がある。胃の内容物が食道に逆流して起こる疾患で、内視鏡検査で食道にびらん、潰瘍が見られるものを逆流性食道炎、見られないものを非びらん性胃食道逆流症と診断している。

 西洋医学では、胃酸の分泌を抑える「プロトンポンプインヒビター」「H2ブロッカー」と呼ばれる薬を用いて治療する。

 漢方では胸焼け、げっぷ、呑酸(どんさん)*1、前胸部不快感など胃食道逆流症を思わせる症状に「六君子湯(りっくんしとう)」「茯苓飲(ぶくりょういん)」「茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)」「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」などを用いる。

 六君子湯は「四君子湯(しくんしとう)」と「二陳湯(にちんとう)」との合方で、胃腸が弱く胃内停水(いないていすい)*2があり、脈腹ともに軟弱で心下部が痞えた感じがあり、食欲が衰え疲労しやすく、日ごろから手足が冷えやすいものを目標にする。薬方に含まれる「人参(にんじん)」「蒼朮(そうじゅつ)」「茯苓(ぶくりょう)」「甘草(かんぞう)」には、胃腸機能を高め消化吸収を良くする作用がある。「陳皮(ちんぴ)」は食欲を増進させ、「半夏(はんげ)」は蒼朮、茯苓と共に胃腸内の停水を取り除く働きがある。

 最近の研究で、六君子湯には食欲を増進させる唯一の消化管ホルモンである「グレリン」の発現・分泌を促進させる作用があることも分かってきた。

*1:酸っぱい液体が口まで上がってきてゲップが出る症状 *2:胃腸の水分代謝が悪くなり、胃内に水がたまってちゃぷちゃぷするような状態