写真家は興奮してはいけない。冷静な目と冷静な行動で被写体を追う

 やがて背後の紫尾連峰の陰から太陽が登り始めた。みるみるうちに、万物が本来の持つ色を見せ始める。天草方面の上空では、不気味なピンクパープルから暗褐色までのグラデーションを呈した雨雲が、まるで触手を伸ばす「もののけ」のようだった。雨雲がゆっくりと風に押されて北上し、天草諸島の北部に掛かったとき、虹が出た!

雨雲が風に押されて北上し、天草北部にさしかかったときに虹が出た。初回から華々しいお出迎えである
【撮影データ】
キヤノンEOS 7D、レンズ:キヤノンEF70-200mmF2.8L IS USM、シャッタースピード:1/85、絞り :6.4、ホワイトバランス:太陽光、ISO感度:400、三脚使用、偏光フィルター使用
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 この東光山公園には、「レインボーブリッジ」という、とても東京の“もの”とは比較にならないほどの長さ30mほどしかない小さな規模の橋がかけられている。なぜレインボーブリッジなのか、イベントなどの際に七色の照明が当てられるからという説もあるが、この日ばかりはまさにレインボーブリッジの上空に奇しくも虹がかかったのだ。

 jinkeディレクターがしきりにメガネを上に上げて、指で目をぬぐう。

 「あはっ? jinkeさん泣いてやんの」

 jinkeディレクターの涙を見つけた造景は、まるでガキ大将がいじめっ子をちゃかすようだった。だが、僕の目はごまかせない。わけまでは見通すことはできなかったが、造景の目も少し潤んでいたようだ。自分の涙を見抜かれまいと、jinkeディレクターをちゃかしていたように思えた。

手前が、まだ風景を楽しむ余裕のあったときのjinkeディレクター。この後、大自然人生劇場が始まると嗚咽(おえつ)するのであった。情けねー(笑)(画像クリックで拡大)

 だが、僕にはそんな涙している余裕はなかった。もちろん感動する心は常に持っているし、その心がなければ、いい作品は写せない。スッと自分の気持ちを静めて、被写体を客観的に見ることができるかどうか。そこに写真家の本質が潜んでいると思うのだ。

長島方面の上空には、あたかも触手を伸ばす「もののけ」のように不気味な雲が現れた
【撮影データ】
キヤノンEOS 7D、レンズ:キヤノンEF-S10-22mmF3.5-4.5 USM、シャッタースピード:1/320、絞り:f6.4、ホワイトバランス:太陽光、ISO感度:400、三脚使用
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