「待てば海路の日和あり」――待つことが撮影の第一歩なのだ

 「いい感じの景色でしょう。これが初夏には田に水が入って、満月の出た夜には、海から光が田に伸びて月光が輝くんですよ。そして秋には実った稲穂が金色に輝く。想像してみてくださいよ。季節を変えれば、四季折々の素晴らしい景色が、全くこの同じ場所から見られるんです」(造景)

 この景色を見せたくて、造景は僕たちをここへ連れてきた。“庭師”には、こうした美しい風景の記憶こそが命であり、まさに自分の生まれ育った原風景こそが、庭という空間をデザインする原点に違いないのだ。自慢げに鼻を膨らませながら興奮気味に話す造景の顔に、エネルギーは満ちあふれていた。

造景さんが言っていることを頭の中で想像してみる。いやはや、初夏にも来てみたいものだと思いました(画像クリックで拡大)

 しかし、ボクたちを出迎えてくれたのは、さらにドラマチックなシーンだった。

 雨雲が上空の南寄りの風に押され、長島町の半島にある行人岳や矢岳にぶつかると、まるで薄墨のような筋が雲から海へと縦につながった。10kmほど先では、雨が降り出したのだ。

 湖のように静まりかえった八代湾に、雨の足跡がまるで湖面の風跡のようにおぼろげに映し出される。不知火という妖怪の光で有名な八代海であるが、それこそ本来の不知火とは違うのだろうが、水平線が青白く輝き、そこに薄墨の雨の絵模様が描かれる。まさに地球の息吹ともいえるシーンが僕たちの目の前に広がった。

雨雲がまるで薄墨を霧で吹いたかのように上空から舞い降りてくる姿が浮かび上がった
【撮影データ】
キヤノンEOS 7D、レンズ:キヤノンEF70-200mmF2.8L IS USM、シャッタースピード:1/100、絞り:f6.4、ホワイトバランス:4500K、ISO感度:400、三脚使用
(画像クリックで拡大)