大画面薄型テレビが日に日に安くなり、テレビ市場が活況を呈している。だがデジタルメディア評論家の麻倉怜士氏は「BDコンテンツが充実した今こそ、フルHDプロジェクターを楽しむ好機」だと語る。麻倉氏が推奨するモデルは、日本ビクターの「DLA-HD950」とソニー「VPL-VW85」の2モデル。まずはフルHDプロジェクター業界をけん引してきた日本ビクターのDLA-HD950を紹介していこう。
高画質なモデルが低価格化した今こそプロジェクターの買い時
麻倉怜士(あさくら・れいじ) デジタル・メディア評論家、日本画質学会副会長、津田塾大学講師(音楽)。手前は麻倉氏が愛用するソニーのフルHDプロジェクター「QUALIA 004」
現在は2011年問題(2011年7月24日のアナログ放送停波)に向けてテレビが売れています。しかし映像ソースがハイビジョンのBDになり、テレビのサイズでその魅力を味わうには、あまりに画面が小さいという状況になってきました。BDは劇場で見る以上のクオリティーの画質が入ったパッケージですし、音質もきわめて優れています。BDのためには5.1chサラウンドのシアター環境が必須になってきました。
私が使っているプロジェクターはソニーが2003年8月に発売した「QUALIA 004」です。初めて反射型液晶でフルHDを実現したもので、当時の価格は240万円(税別)でした。しかし現在は、透過型液晶プロジェクターならフルHDでも実売30万円以下が普通ですし、高級なLCOS型(反射型液晶デバイスを採用するプロジェクター)でも40万円台から買えます。フルHDプロジェクターも“高嶺の花”ではなくなりました。価格が下がっただけでなく性能もひじょうに上がりましたので、まさに今が買い時と言えます。
フルHDプロジェクターが市場に出回り始めたのは、2006年にBD-ROMが登場した頃です。それから4年ほど経過し、画質が順調に上がってきました。当初の透過型液晶プロジェクターは黒の締まりが今ひとつでしたが、3世代くらいになるとコントラストも良くなってきました。
黒の締まりと高コントラストで他社を圧倒する日本ビクター
今回紹介する「DLA-HD950」は、日本ビクターがこれまで培ってきたものづくり、絵づくりの伝統に則って仕上げた素晴らしいプロジェクターです。
ビクターは「D-ILA」という反射型液晶デバイスを開発し、さまざまな形で実用化しています。ホームシアターはもちろんのこと、4k2k(3840×2160ドット)、8k4k(7680×4320ドット)のスーパーハイビジョンを投射できるプロジェクターも視野に入れて開発しています。NHK技研公開(NHKの研究機関であるNHK放送技術研究所が毎年春に開催する一般公開イベント)の「スーパーハイビジョンシアター」にもビクターのD-ILAプロジェクターが使われています。こうした技術的なアドバンテージのある製品を、民生機器に落とし込んでいるのです。
DLA-HD950は5世代目のモデルですが、最初に登場した「DLA-HD1」(2007年1月発売)を見た時には驚きました。当時の透過型液晶プロジェクターはひじょうに黒が浮いていてコントラストが悪く、色も冴えませんでした。方やDLPプロジェクター(米テキサス・インスツルメンツが開発した「DMD」を用いたプロジェクター)はコントラストが高いものの、カラーブレーキングノイズ(色にじみノイズ)が大いに問題となっていました。
そんな時にDLA-HD1が登場し、それまで数千対1だったコントラスト比を数万対1にまで引き上げたのです。すでにQUALIA 004のようなハイエンドモデルはありましたが、ビクターが100万円を切るリーズナブルなモデルを出したことで、映画を見る楽しみが初めて一般的になったと言えます。
それ以降、ビクターはハイエンドのプロジェクター市場で常勝を続けてきました。プロジェクターを10台ほど並べて画質比較する「シュートアウト」を行っても、ビクターのD-ILAプロジェクターは黒の締まり感でほかを圧倒していました。
シュートアウトでは、個々のプロジェクターの実力がかなりシビアに現れるものです。例えば『2001年宇宙の旅』の、漆黒の宇宙に星がきらめいている中に宇宙船が浮かぶシーンです。同一画面で暗いところは暗く、明るいところは明るく表現しなければならないのですが、これまではビクターの製品だけ、黒が締まって白が輝いていました。







