白い氷上を舞い、“心を魅了する”フィギュアスケート。その衣装に隠された機能と美しさへのこだわりを探るシリーズ第2回。今回は、衣装制作の流れ、体型を美しく見せる“数ミリの違い”、デザイン画では気づかない意外な盲点、気になるブラやパンツ、タイツなど、“テレビで観ても分からないポイント”を取り上げる。 

 ※本編は、「フィギュアスケート衣装」後編です。初めてご覧になる方は、前編からお読みになることをお勧めします。

フルオーダーメイド衣装、制作の流れ

 五輪出場を競うようなトップレベルの選手ともなれば、あの華麗な衣装は誰のデザインなのか気になるところだ。今回の取材先、 バレエとダンスの総合メーカー「チャコット」でその点を聞くと、衣装制作はコーチが指定することが多く、コーチが変わると、作る場所(人)も変わるケースが多いという。現在の安藤美姫選手の衣装はモロゾフコーチの、浅田真央選手はタラソワコーチの意見が強いのでは、とのこと。

 チャコットでは、2008年から村主章枝(すぐり・ふみえ)選手の競技用コスチューム制作を手がけている。村主章枝選手は2002年ソルトレイクシティ冬季五輪で5位、2006年トリノ冬季五輪で4位と、メダル獲得まであと一歩の戦績。2010年のバンクーバー冬季五輪に向け、日本フィギュアスケート史上初の3大会連続五輪出場の夢を賭けたが、叶わなかった。

 フィギュアスケートのオーダーメイド衣装はどのような流れで作るのか。今回、村主選手の衣装を例に話を聞いた。テレビでその衣装をご覧になった方も多いかと思う。

 曲も振付も決まり、練習も始まった段階で、デザイナーは選手、振付師と最初の打ち合わせをする。具体的に「この曲」で「こんな振付」とのレクチャーを受け、その上で衣装のイメージを細かく引き出しながらデザイン画を起こし、色やシルエットを模索する。制作の流れは他の選手の場合も同様だと思う、と話すのは村主選手の衣装を担当するデザイナー山口聡子さんだ。

村主章枝選手2009-2010年のフリー演技「スパルタクス」衣装制作で、担当の山口聡子デザイナーが描いたデザイン画。「奴隷の役柄の演技とのことで、ヒモを巻き付けるようなデザインをまずイメージしました」(画像クリックで拡大)

オーダーメイド衣装担当デザイナー山口聡子さん(チャコット 生産二部 衣裳課)。2008年から村主章枝選手の衣装デザインも手がける(画像クリックで拡大)

2009年12月 全日本フィギュアスケート選手権大会(大阪・なみはやドーム)における村主章枝選手のフリースケーティング「スパルタクス」の演技。村主選手の衣装は、幼少の頃よりバレエ指導に当たる近藤茂奈さんの意見、アドバイスをもとに制作 (C)T-HONMA