個性派俳優、中村靖日扮するビジネスパーソンが通勤途中や運転中、会議のプレゼンなどで腹痛に悩んでいる――、そんなテレビCMをご記憶の方も多いと思う。このテレビCMは何が言いたかったのか? それは、アナタが悩んでいる腹痛と下痢は体質ではなく「IBS」という病気であり、医師に相談すればちゃんとした治療法がある、ということだ。

ストレスが腸に多大な影響を与える

 「IBS(Irritable Bowel Syndrome;過敏性腸症候群)」は、潰瘍や癌などが無いにもかかわらず、腹痛や腹部不快感と便通異常(下痢、便秘)などの症状が発生し、それらの症状が長期間持続あるいは悪化・改善を繰り返す機能性疾患。患者にとってみれば、さしたる原因も考えられないのに毎日のように下痢や便秘を繰り返してしまうことになる。特に下痢や腹痛は通勤時間などの午前中に症状が出て、夜になると治まってしまうことが多いので、体質だとあきらめている患者も多いという。

 症状が下痢や便秘だけに周囲の人間から見れば「たいしたことじゃない」と考えてしまうが、患者本人にとってはその悩みは深刻だ。毎朝、腹痛になり、トイレに駆け込むことを想像してほしい。電車に乗ることが、そして会社に行くことがだんだん嫌になってしまうこともある。しかも、その内容が下痢なので、周囲の人間に気軽に相談するわけにもいかない。長年1人で悩んでいるケースがほとんどだ。

 しかしながら、IBSは病気であり、その発生メカニズムは明らかになっている。発症の原因は主にストレス。人はストレスを受けると、脳からストレスホルモンと呼ばれるCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が放出される。それが腸の細胞に作用し、「セロトニン」と呼ばれる神経伝達物質を遊離する。IBSの患者は、このセロトニンが過剰に発生していると考えられる。この過剰発生したセロトニンが腸を痙攣(けいれん)や収縮させることで下痢や便秘を引き起こすわけだ。またセロトニンは腸の感覚を敏感にするため、痛みや不快感を強く感じてしまう。

 「脳と腸は離れているのに?」という疑問はもっともだ。だが、腸と脳は「脳腸相関」という言葉があるくらい密接な関係がある。実は腸には脳と同じ神経が多く分布し、それらは自律神経を介してつながっているのだ。