25年以上勤めていたのに、厚生年金が10万円だなんて!

 それでは、事例を紹介しよう。今回は、50歳以上の人に通知される年金見込額に関するもの。

 50歳以上で受給資格期間(原則として公的年金に25年以上加入)を満たしている人には、60歳になるまで現在加入している年金制度(サラリーマンなら厚生年金、自営業等なら国民年金)に加入し続けるものと仮定して、その人の支給開始年齢から受け取れる年金額が示される。

ただし、加給年金(いわゆる家族手当)は含まれない。

 Aさんは、昭和29年生まれの男性。61歳から老齢厚生年金の報酬比例部分が受け取れる。しかし、通知された年金額があまりに少なくて愕然とした。320カ月間保険料を納めた厚生年金が、年額で10万円余りとなっている(図1)。

「老齢厚生年金」とは厚生年金に加入していた人が老後に受け取れる給付のことで、加入期間が1年以上ある人は60歳から65歳になるまで「特別支給の老齢厚生年金(在職中の給料と関係なく加入期間によって決まる「定額部分」と給料の額によって決まる「報酬比例部分」がある)が受け取れる。なお、支給開始年齢は定額部分、報酬比例部分それぞれ段階的に引き上げられており、「定期便」にはその人の支給開始年齢が記載されている。「****」と記入されている部分は、支給されないことを意味する(受給資格期間を満たしていない場合も同様)。

図1:320カ月保険料を納めたAさんの老齢厚生年金の額が年額で10万円余り(画像クリックで拡大)

 弟のBさんの見込額(図2)と見比べて、ますます納得できない。「これは、何かの間違いだ!」とAさんは、相談窓口にやって来た。

図2:Bさんに届いた定期便。加入期間は324カ月とほぼ同じだが、こちらは老齢厚生年金の額が年額で90万円台になっている(画像クリックで拡大)

 実はこれ、決して間違いではない。だが、Aさんの受け取れる年金額がこれですべてでもない。なぜなら、Aさんは厚生年金基金(以下「基金」という)に加入していたからだ。

 基金は企業年金の一種であるが、厚生年金の一部を代行している。どの部分を代行しているかというと、「報酬比例部分」の基本的な部分。その結果、厚生年金本体から支給されるのは、標準報酬の再評価分と物価スライド分のみとなっている。

報酬比例部分は加入していた期間中の標準報酬月額(給与等)を平均して算出した「平均標準報酬月額」を基に算出する。ただし平均標準報酬月額は、年により変化する給与水準で決まるため、現在の水準に近づけるように再計算を行っている(これを「再評価」という)。なお、平成15年4月以後の期間は賞与も合わせた「平均標準報酬額」で計算されている。

 基金への加入の有無は、定期便の中の「これまでの『年金加入履歴』です」という表を見ると確認できる。Aさんの履歴(図3)からは、Aさんが厚生年金加入期間と同じ期間、基金に加入していたことが分かる。一方、新卒時から基金に加入していない会社で働き続けてきたBさんの加入履歴は、実にシンプル(図4)。この違いが、見込額計算の上で大きく影響する。

図3:「ねんきん定期便」の中の「これまでの『年金加入履歴』です」という表。カッコ内に厚生年金基金加入期間が表記されている(画像クリックで拡大)

図4:Bさんの加入履歴には厚生年金基金加入期間が表記されていない(画像クリックで拡大)

 では、その「基金」の分はどこで管理しているかというと、加入していた基金である。加入していた基金の名称は、各自で保管している「厚生年金基金加入員証」(図5)を見れば分かる。なお、基金から給付が受けられる人には、退職後しばらくして、基金からお知らせが届くようになっている。また、基金では、加入員、受給者、受給待期者(基金の加入事業所を退職した人で、まだ支給開始年齢に到達していない人)の記録確認に応じているはずなので、問い合わせてみるとよい。

厚生年金基金に加入していた人は加入員証を所持している。加入員証の様式は、基金ごとに異なる(画像クリックで拡大)

 基金では代行部分にプラスアルファをつけて給付することになっているので、基金から支給される年金額と合わせると、結果的には基金に加入していなかった人より受給額が多くなるはずだ。加算年金がある場合はさらに受給額が多くなるが、一時金で精算してしまった人は、プラスアルファ付きの代行部分のみになる(代行部分が残っているので、基金への請求を忘れないように)。

 ただし、見込額を計算してもらえる年齢も基金によって違うようなので、まずは、加入していた基金の情報をホームページ等で調べてみるとよいだろう。