ところで、空気清浄機を購入する際に留意しておかなくてはならないことがある。

 各社が発表しているウイルスの抑制効果は、限られた環境での実験結果であるという点だ。例えば6畳間などと比べると極めて狭い環境での実証という場合もある。空気清浄機に搭載されている部品(デバイス)そのものや技術そのもので検証し、空気清浄機として検証したものではない場合もある。仮に、新型インフルエンザウイルスに100%、99.9%の抑制効果を謳っていても、「空気清浄機を買ったから新型インフルエンザにはかからない」というのとは同義語にならないことを踏まえておくべきだ。

 実際に業界は、販売に慎重だ。市場での人気ぶりに「抑制効果の話題だけが先行し、誤解されているのではないか」との懸念からだ。

 販売店は店頭の展示や販促物で、新型インフルエンザの抑制効果を唱わないようにしているという。加えて「新型インフルエンザの抑制効果が実証された部品を搭載した空気清浄機を導入したからといって、うがいや手洗いは続けてほしい」と説明する徹底ぶりだ。利用者側に過剰な安心感を与え、「空気清浄機を買ったから新型インフルエンザにはかからない」という誤解を招く恐れがあるからだ。

 メーカーも抑制効果を示す一方で、“絶対”ではないことを明記して消費者に配慮する。「本製品は、ウイルス等を抑制する機能はありますが、これにより無菌状態をつくりだすものではなく、感染予防を保証するものではありません」「実際の浄化効果は、お部屋の状態や使用状況によって異なります」といった表記をカタログに掲載しているのだ。

 空気清浄機があった方がよいのは事実。感染は完全に防げないとしても、今後も買い求める消費者は増えるだろう。家電業界にとっては製品拡販の絶好の機会だが、抑制効果だけが一人歩きすると、消費者とのトラブルにもなりかねない。実験の基準をさらに分かりやすく公表するなどの対策も必要だろう。

各社のカタログに実験内容などが記されている。小さな文字で書かれているが重要なことなのでよく確認しよう(画像クリックで拡大)

著者

大河原克行(おおかわら かつゆき)

1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、約20年にわたって、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、パソコン誌、Web媒体などで活躍。nikkeiBPnetの「ビジネス・フォアフロント」の連載を担当。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器 変革への挑戦」(宝島社)、「パソコンウォーズ最前線」(オーム社)などがある。近著は「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(アスキー新書)。