“文具王”の異名を持ち、文具メーカーでユニークな商品を生み出し続ける高畑正幸氏が、最新文具の奥深~い世界をナビゲートする。

 自分の思考が固定観念にとらわれていることを、驚きとともに実感させられることがある。人はそれを「コロンブスの卵」と呼んだりするが、まさにこのプロダクトを見たとき、その発想に衝撃を受けた。

 その製品とは、ドイツのLYRA(リラ)社から発売された色鉛筆「カラーストライプ」だ。

LYRA(リラ)の色鉛筆「カラーストライプ」。価格は8色セットで2100円、16色セットで4200円(画像クリックで拡大)

 鉛筆は17世紀終盤には現在とほぼ同じ形に完成されたプロダクトで、芯の素材などの開発はあるにせよ、もう250年近く、本質的には形を変えていない。そのシンプルで洗練された形状と機能は誰もが知るところであり、文房具を代表する一つの究極の形でもある。私もこれまで、これ以上手を加える余地はないと、思い込んでいた。しかし、この「カラーストライプ」はそんな固定観念の一部をひょいと、飛び越えて見せた。

本来中心に丸く見えるはずの芯が軸の外まではみ出している(画像クリックで拡大)

削った先端側から見ると、未来の鉄道模型のようだ(画像クリックで拡大)

 「カラーストライプ」は、断面がおにぎり型の三角形の色鉛筆だが、断面を見ると、明らかに普通ではない。本来中心に円く見えるはずの芯が軸の外まではみ出している。「梅干し」ではなく、「天むす」状態だ。いったいこれは・・・。

 このデザインの真意は、削られた先端を見れば分かる。他の鉛筆と同じように、先端を円錐状に削ったものだが、先端から軸の稜線へと、芯の色が継ぎ目なくつながっていく。削った先端側から見ると、未来の鉄道模型のよう。見た目にも美しいこの形状は、先端を使った描画では従来の色鉛筆と全く同じ使用感でありながら、芯が露出している稜線部分を下に向けて寝かせると、幅広の画材として面塗りすることが可能となる。