"ちょんまげブーム"の仕掛け人でテレビコラムニストとして著名なペリー荻野と、ファッションの達人で「フントニモー」が決めゼリフのいであつしが、連ドラの衣装に物申す!
第17回は『白い春』から…。

ペリー  そんなわけで、今回は阿部寛が元ヤクザを演じている『白い春』です。
いで  注目は阿部寛の出所ファッションだね。ジャンパーの襟を立てて、片手にボストンバッグを抱えて、伏し目がちの猫背で歩く。これ、ドラマの出所ファッションの定番スタイルですから。
ペリー  そんな定番があったとは。
いで  基本形は高倉健。出所してすぐ定食屋でカツ丼をかっこむのもね。
ペリー  私はてっきりカツ丼は取り調べ中に食べるものだとばかり思ってました。
いで  出所後すぐに定食屋でカツ丼ってのもお約束なんだよ。阿部ちゃんは健さんよりデカイぶん、さらに刺身の盛り合わせと天ぷらの定食とサバ焼き定食まで頼んでる。
ペリー  ファッション的にはどうですか。かなり哀愁が出てましたが。
いで  健さんは、バラクータのスイングトップの襟を立ててハンチング(1)を目深にかぶってズボンはチノパン(2)コンサバ(3)だけど、阿部ちゃんはちょっと違う。ジャンパーはバーニーズニューヨークとかで売ってそうな流行りの薄手のレザーブルゾン、パンツも細身だし、エミリオプッチみたいな柄シャツを着てる。ボストンバッグも、阿部ちゃんが持つとやたら背が高くてデカイからボッテガ・ヴェネタのチビボストンに見えちゃう。
ペリー  9年も入っていたのに、意外と新しいですね。感覚が。
いで  出所ファッション2009春夏だね。メンズノンノのモデル出身だから。
ペリー  メンズノンノ出身といえば、今年は風間トオルが昼ドラではじけましたね!
いで  阿部ちゃんのほうが怪優としては一歩リードしてたけど、ペリーさんの大好きな中島丈博先生原作の『非婚同盟』で、ついにきたね、風間トオルも。
ペリー  まさか、成金おやじの役をやっちゃうとは思いませんでした。しかも、セリフがすごい。妻子にゴルフに行くとウソついて愛人のところに行くのを「黒い芝生で玉転がしだな。わっはっは」って、言えないですよ、普通。わっはっはじゃないって。
いで  あれは名セリフだね。私、さっそくスナックで使わせていただきました。
ペリー  風間トオルが違う路線に脱皮する瞬間を目撃した気持ちになりましたね。妙なさわやかさすら漂ってましたから。
いで  モデル出身の俳優だと田辺誠一も脱皮してる最中だよな。
ペリー  神の雫』でワイン評論家をやってた時には、ずらりと並べた空のグラスを前に「うおーっ」とか叫んでましたから。シルエットは山下真司でした。
いで  大物を忘れてたよ、草刈正雄! 『アタシんちの男子』でもおもちゃ会社の社長で、自家用ヘリコプターで登場するわ、衣装が王子様みたいだわ。
ペリー  二枚目から脱皮して、さらに脱皮したら王子様になっちゃった。阿部ちゃんも風間ちゃんもまだこの域には達してないですね。
いで  二枚目時代はよくものまねされてたのに。オレできるよ。ポケットに両手を入れて、歯を見せてはにかみ笑顔で言うのがコツ。「こんにちは、草刈正雄です…」
ペリー  あんまり似てないですよ。
いで  今の草刈正雄の脱皮っぷりにはオスカーをあげたいくらいだよね。
ペリー  私たちから賞をもらっても喜ばれないと思うよ。だいたい何部門なの?
いで  「こんにちは草刈です賞」

今月のファッション・チェックは
『白い春』

殺人罪で9年の懲役刑を受けた佐倉春男(阿部寛)は出所後、収監前に付き合っていた恋人が病死していたことを知る。そんな中、春男の前に一人の少女・村上さち(大橋のぞみ)が現れ、春男はさちが自分の子とは知らず育てていくことに。(火曜22時/フジテレビ系)
http://ktv.jp/haru/index.html

(1)ハンチング…19世紀半ばからイギリスの上流階級で用いられるようになった狩猟用の帽子。別名ハンチングベレー、ハンチングキャップ、鳥打帽(とりうちぼう)とも呼ばれる。

(2)チノパン…チノ・パンツの略。「チノ・クロス」と呼ばれる綿の生地で作られたズボンのこと。

(3)コンサバ…コンサバティブ・ファッションの略で、衣服・文化の伝統を重んじた服装のこと。「コンサバティブ(conservative)」は「保守的」という意味。

ペリー荻野さんの新刊情報!

西岡善信、構成=ペリー荻野(1200円/NHK出版)

『紋二郎も鬼平も犬神家もこうしてできた』

『木枯し紋次郎』や『鬼平犯科帳』といった傑作時代劇、勝新太郎の代表作『座頭市』、市川昆の元祖『犬神家の一族』、夏目雅子主演の『鬼龍院花子の生涯』など、歴代のそうそうたる名作に携わった世界的な美術監督、西岡善信。これら傑作ドラマはどのようにして作られたのか、臨場感あふれる撮影現場の舞台裏に迫ります! 『木枯し紋次郎』の俳優・中村敦夫氏との対談も収録。

著 者

ペリー荻野(ぺりー おぎの)

西条 昇

1962年愛知県生まれ。コラムニスト&時代劇評論家。大学在学中にラジオのパーソナリティ兼原稿書きでデビュー。現在の連載は『読売新聞(日曜版)』『中日新聞』『週刊ポスト』『ESSE』『e2 by スカパー!』ほか多数。CD『ちょんまーじゅ』の監修を勤めるなど、時代劇ブームの仕掛け人としても有名。

著 者

いであつし

西条 昇

1961年静岡県生まれ。コピーライター、『ポパイ』編集部を経て、『テレビブロス』などでコラムニストに。ファッション、テレビ、グルメなどを中心に執筆を続ける。最近感動した食べ物は、皇室の引き出物にもなるという京都の老舗緑寿庵清水の「金平糖」。現在、『ビギン』『メンズEX』等で連載中。