「“新書”最前線」は、日本で最も新書に詳しいWebサイト「新書マップ」の協力で、注目すべき新書の新刊を紹介するコーナーです。各社合わせて毎月80〜100点ほど出版される今いちばん元気な出版物「新書」のトレンド情報を、月1回のペースでお届けします。

 日本の歴史は新書の定番ジャンル。今シーズンもこのジャンルで何冊もの新刊が出た中から今月は、江戸時代幕末の乱世に着目した迫真のドキュメント3冊を紹介しよう。政治も経済もますます混迷を深めつつある現世と引き比べ、我が身に引き寄せてみずにはいられないラインナップだ。

何が彼らを天誅=テロに走らせたのか

野口武彦『天誅と新選組 : 幕末バトル・ロワイヤル』(新潮新書/756円)(画像クリックで拡大)

 『幕末バトル・ロワイヤル:天誅と新選組』は、14代将軍・家茂の治世だった文久の3年間(1861〜1863年)を中心とする歴史読み物。1868年の明治維新を前に、この時代には大きな出来事が次々と起こった。例えば文久2年は、1月に坂下門外の変、2月和宮降嫁、4月寺田屋騒動、8月生麦事件といった具合。新選組が京都入りしたのは翌年はじめのことだった。

 倒幕派と佐幕派、あるいは攘夷派と開国派とが入り乱れ、幕府の官吏から下級武士や浪人衆まで、およそ刀を腰に下げた男なら誰もが、政治に無頓着では生き延びることのできなかった時代である。国の行く末を案じ思い詰めて、要人に斬りかかる者たちあり。一方で、私利私欲にかられて権謀術数に走る者たちあり。江戸や京都ではテロが横行、その大義は「天誅」と称された。

 この本は「幕末バトル・ロワイヤル」という新書シリーズの第3弾。タイトルに「天誅と新選組」とあるが、近藤勇が主役というわけではない。新選組の研究書なわけでもない。「公武合体論」に始まり、天狗党の最後を描いた「鰊倉(にしんぐら)に死す」で終わる全43編のうち、新選組に触れているのは3分の1もないかもしれないぐらいだ。代わりに何が書いてあるかというと、主なテロ事件の背景となった政局、世情、そしてかかわった人物たちの来歴である。

 複雑怪奇な幕末の人物相関を、テンポ良く、鮮やかに書き下した本書なら、新選組ドラマを一つも観たことがない幕末史初心者にも、まるで時代小説を読むように読み切ることができるだろう。コンパクトながら、時代劇などに出てくる幕末の事件と人物はほぼ網羅されているので、一通りの知識はこの1冊で身につく。興味をそそられるエピソードも一つ二つとあるだろう。新書マップで連想検索すれば、あなたの関心事にフォーカスした別の本がきっと見つかるにちがいない。この後に紹介する残り2冊は人物伝だ。