「篤姫」に続いてNHK大河ドラマ「天地人」も好調だ。大河が週間視聴率の1位をこれだけキープするのも事件だろう。

 「篤姫」の成功の因として田淵久美子の脚本、民放ドラマのいいとこ取り的な演出、宮崎あおいの魅力、日本人が好きな幕末という背景、主婦子供層の巧みな取り込み……いろいろ挙げられたが、誰も言いださない理由が一つだけあった。

 それが、巨人戦の視聴者だ。

 元来、日曜夜8時といえば巨人戦のナイターが、他番組の前に立ちはだかっていたものだ。それがFA、ドラフト逆指名、外国人の横取り……と勢力均衡が崩れ、プロ野球そのものが人気を失った結果、巨人戦視聴者はいったいどこへ流れたか。

 それが去年は「篤姫」だったのではないか。もともと巨人戦ファンというのは団塊世代が多い。M3(50代以上の男性)層だ。彼らは、うるさいバラエティーや民放のチャラチャラしたドラマには興味を示さない。

 キャラクターが渋く、1話完結で、滋味深い作品が好きだ。団塊世代のヒーローだった水谷豊主演の「相棒」の人気の秘密もそこにある。今後、各テレビ局は、いちばんテレビを見る時間のある、リタイア組を含めたM3やF3(50代以上女性)層の奪い合いになるだろう。

 その教訓を活(い)かしていない、今期の連続ドラマは、ゆえに、つらい数字になっているのだ。


(文/エンターテインメント評論家 麻生 香太郎)

【初出】日本経済新聞、2009年1月31日夕刊
※「テレビの壺」は麻生香太郎氏が日本経済新聞、土曜日の夕刊に連載中のコラムです。日本経済新聞に掲載後、麻生氏および日本経済新聞社に許可を得て転載しております。

著者

麻生香太郎(あそう こうたろう)

大阪市生まれ。東京大学文学部卒。在学中に歌謡曲の作詞家として活動を開始。森進一、野口五郎、小柳ルミ子、小林幸子、TM NETWORKらに作品を提供した。その後、80年代半ばにエンタテインメントジャーナリストへと転身。以来、20年以上にわたって業界をウォッチし続ける。現在は「日経エンタテインメント!」「テレビ・ステーション」などで連載コラムを執筆中。著書に『ジャパニーズ・エンタテインメント・リポート』(ダイヤモンド社)など。