ウィルコムの“変化”に見られる危機感の強さ

 イー・モバイルなど携帯電話キャリアが仕掛けた3G携帯電話による定額データ通信の活性化によって、速度的に不利なウィルコムは従来の主力であったデータ通信需要が大幅に落ち込んでいる。これに対抗するには次世代PHSの立ち上がりを待つ必要があるものの、それにはまだまだ時間が必要だ。

 こうした市場環境の影響からか、これまで次世代PHSを指していた「WILLCOM CORE」も、今回の発表では次世代PHSをはじめとしたさまざまな通信網を含めた総合的なネットワークを指すようになっていた。一部報道で取り沙汰されたMVNOによる3G携帯電話網の利用に関しても、複数の事業者と交渉を行っていることを明らかにしている。PHS、次世代PHSにこだわってきた同社がこうした姿勢の変化を見せているのも、現在の市場変化に対して相当な危機感を持っていることの表れといえるだろう。

 実は、先に紹介した施策にも、既存ユーザーにとってはデメリットにつながるいくつかの変更が行われている。

 例えばWX340Kは、Flash Liteなどの機能を実現させる代わりに、Webブラウザが“京ぽん”のアイデンティティーともいえる「Opera」から「NetFront」に変更された。また新しいウィルコム定額プランの通信料についても、従来は1パケット当たり0.0105円であったのが、0.084円へと大幅にアップしている。従来のウィルコム定額プランも引き続き契約可能であるとはいえ、今後新しいプランが主力になっていくと考えられることから、「定額データ通信が必要なほど利用していない」というライトユーザーにはマイナスとなる可能性が高い。強固な固定ファンを抱えるウィルコムにとってこうした変化は不利な要素に働きかねない。だが厳しい競争の中では、それを行ってでも新たな需要の開拓を行う必要がある、と判断したといえそうだ。

 3G回線の利用などで次世代PHSまでのデータ通信需要を“つなぐ”だけでなく、2台目需要の増加による既存ユーザーからの収益の落ち込みをいかに補っていくか。インフラの切り替えという局面において、ウィルコムにはかなり難しいかじ取りが求められているようだ。

WILLCOM COREの位置付けが、次世代PHSだけでなく、さまざまな通信インフラを用いた総合ネットワークへと変化しているのも印象的であった(画像クリックで拡大)

著 者

佐野 正弘(さの まさひろ)

 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。