歩行時、運転中の車内、電車での移動時など、ありとあらゆる時と場所において、大画面で映像を楽しめる……昭和の時代にドップリ浸かった人間にとって、21世紀とはそんな時代ではなかったか。1990年代後半に登場した「Eye-Trek」(オリンパス)や「Glasstron」(ソニー)などのHMD(ヘッドマウント・ディスプレイ)と呼ばれる機器こそ、その「夢の大画面」を実現するデバイスとして注目を集めたはずであった。

オリンパスが1998年6月に発売した「Eye-Trek(アイトレック)」

ソニーが1999年12月に発売した「Glasstron Lite(グラストロン・ライト)」

 21世紀を目前にして登場したHMDだが、多くの消費者の心をつかむことなく消えてしまった。その理由はいくつかあるだろう。両眼をディスプレイが覆うため周りが全く見えなくなってしまうことや、AV機器との接続などを行う本体部分が別途必要だったこと、バッテリー駆動ができないため、完全に屋内仕様だったことなどが挙げられる。つまり、“夢まであと一歩”だったわけだ。

 今回レビューするニコン「メディアポート UP(ユー・ピー)」(以下、UP)は、一見するとHMDにも思えるが、どうも聞くところによると全くの別物らしい。ヘッドホンに単眼タイプのディスプレイが付くという意味ではHMDそのものなのだが、従来のHMDとどのように違うのだろうか。

ニコンが2008年12月に発売した「メディアポート UP(ユー・ピー)」。スタイルはHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)の一種に見える (画像クリックで拡大)