『慰めの報酬』も、この路線を踏襲しているが、今回はアクション面がとりわけ強化されている。冒頭のカー・アクションを皮切りに、宙づり状態での肉弾戦や、水上や上空で展開するチェイスに飛行チェイスとアクションの見せ場は盛りだくさんだが、それらは荒唐無稽だったブロスナン版や『カジノ・ロワイヤル』よりもリアリティーを増している。

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 これは『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』でアクション・ファンを唸らせたスタント・コーディネーターのダン・ブラッドリーを第2班監督に迎えた効果が大きい。手持ちカメラを多用し、素早くカットを切り替える映像展開のスタイルは、確かに『ボーン・アルティメイタム』を連想させる。無駄がなくキレの良いアクションは、まさに迫真という言葉がピッタリくる。もちろん、代役ナシで体当たりのアクションに挑んだクレイグの熱演も見逃せない。

 『ネバーランド』などのドラマ作品で手腕を発揮してきたマーク・フォースター監督の起用も注目したいポイントだ。ボンドとカミーユという2人の復讐者を並べることで、人間ドラマは深みを増している上に、ボンドと上司Mの親子のような関係を見せるエピソードも興味深い。前作で諜報の世界の現実を学んだとはいえ、経験不足ゆえにMに叱責される彼には、まだまだ学ぶことがあるのだ。

 現実感を深めて、さらなる進化を遂げたシリーズ最新作。本気モードのボンドの活躍を、ぜひ体感してほしい。

著者

相馬 学(そうま まなぶ)

1966年生まれ、映画周りのフリーライター。Weeklyぴあ、GLAMOROUS、AUDITION誌等で記事やレビューを執筆中。アクションとスリラー、コメディーを熱烈に愛する。仕事と趣味を兼ねたブログ「映画×ロケンロー備忘録」をユル~く更新中。