今回登場するのはちょっとユニークな名前の作家・イラストレーターのD[di:]さん。8月28日に、こちらもユニークなタイトルの小説『銭湯の人魚姫と魔女の森』を上梓したばかり。実は麻生氏とD[di:]さんは普段からメールを交換する仲らしい。その麻生氏が、小説のことはもちろん、謎の作家D[di:]さんの人柄にも迫った!

 彼女と初めて会ったのは、かれこれ10年前のことである。「パンクロッカーです」と言われ、話を聞いてみると、彼女の所属事務所の社長さんとは顔見知りの仲であった。ならば知らない仲ではないような気がしたので応援してあげよう、と思ったのがきっかけで10年近くの長い付き合いになってしまった。

 ルックスは当時から、椎名林檎をセクシーに柔らかくしたような美形だった。放っておいても売れるな、と思ったことを、今でもはっきりと記憶している。

 名前はD[di:]という。発音記号通り「ディー」と発音する。頭文字なのか何なのか、いずれ、フルネームが分かるだろう、と思って10年、いまだにディーとしか知らない。

 この10年間、彼女はまずイラストや油絵ですごい才能を発揮していた。イラストの上手いパンクロッカーなんだ、と思っていたら、なんと、いきなり小説を書き出した。もちろん、最初はエキセントリックなトンがった小説だった。才気走りすぎていて、非常に面白いが、シュールすぎて、本好きの知人に薦めるのは、どうしようか、と迷うようなアーティスティックな作風だった。

 2007年のクリスマス、彼女は六本木ヒルズのTSUTAYAのクリスマスディスプレイを担当していた。そこで、久しぶりに話し込むと、今度は大手の文藝春秋社(!)で小説を書き始めているという。シュールな文体が文藝春秋に合うのかと思ったが口には出さずにいた。で、明けて2008年2月ころ、最初の原稿が別冊文藝春秋に掲載されると聞いた。個人的には別冊文藝春秋は入手し難いと思っているのだが、近くの本屋にオーダーしてやっと入手した。

 タイトルは『銭湯の人魚姫と魔女の森』。

 ながー。だが、文体は意外や意外、ものすごく読みやすくなっていた。

 しかも時代に対する感受性が研ぎ澄まされていて、なおかつ嫌味ではない。語り口がイマドキの女のコでありながら(お笑いでいう)ツカミがうまい。実をいうと、最近の芥川賞を初めとする文学賞関係の若手女性作家の文体には飽き飽きしていたので、(リスが突然訪れた春の気配に驚くように)正直、成長したなあ、と軽く感動してしまった。

 D[di:]、進化している…。

 早速メールで「面白い」旨を書いた。すると返事は「あなたのメールは、絵文字が多すぎて読み難いことこの上ない」だった…。せっかく褒めたのに、こういう返信メールをするところがD[di:]らしい。シャイでへそ曲がりなのだ。

 その『銭湯の人魚姫と魔女の森』が完成して、今回、文藝春秋社から8月28日に発売された。

 これは作家D[di:]として、初めてのインタビューだ。