米ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」は映画だけでいいと思っていたが、CSのLaLa TVが月―金で日に2本ずつ放送し始めたため、急遽(きゅうきょ)録画鑑賞するはめになった(WOWOWやテレビ東京でもやっている)。4~5話見た段階で、男には不必要かなと思ったが10~12話過ぎるあたりから、すっかりハマってしまった。

 これは、よく出来た? ラブコメ千夜一夜? だ。映画だとワンテーマのラブコメディーも、4人主人公がいると4通り、うまくすれば4×4=16通りの解釈とストーリーが導ける。一つのテーマ(彼の浮気、避妊、性病等)についてニューヨークの最先端情報を駆使して話が組み立てられている。おもしろく、なるほど実用的でさえある。

 だが最初に発売した2004年、ドラマのDVDBOXが売れたのは東京ぐらいで、大阪は売れなかった、という。関西圏は女性のキャリア職場が東京と比べて少なく、女性の幸せも依然「いいとこのボンボンのお嫁さん」と考えられがちなのかも。40歳前後の働く女性がバンバン恋愛しバンバンSEXするドラマは敬遠されるのだろうか。

 4年前、地方はもっと悲惨だった。レンタル店側が「セックス」という文字を見ただけで拒否反応を起こし「ウチは仕入れません」となる。関東の一部でさえ当初、店に並ばなかった。今回、映画とセレブの推薦付きでどこまで、この名作が浸透するか。まずは関西圏の動向を静かに見守りたい。

(文/エンターテインメント評論家 麻生 香太郎)

【初出】日本経済新聞、2008年8月30日夕刊
※「テレビの壺」は麻生香太郎氏が日本経済新聞、土曜日の夕刊に連載中のコラムです。日本経済新聞に掲載後、麻生氏および日本経済新聞社に許可を得て転載しております。

著者

麻生香太郎(あそう こうたろう)

大阪市生まれ。東京大学文学部卒。在学中に歌謡曲の作詞家として活動を開始。森進一、野口五郎、小柳ルミ子、小林幸子、TM NETWORKらに作品を提供した。その後、80年代半ばにエンタテインメントジャーナリストへと転身。以来、20年以上にわたって業界をウォッチし続ける。現在は「日経エンタテインメント!」「テレビ・ステーション」などで連載コラムを執筆中。著書に『ジャパニーズ・エンタテインメント・リポート』(ダイヤモンド社)など。