三菱鉛筆群馬県販売と三菱鉛筆埼玉県販売が7月から発売した「筆鉛筆」(420円)。硬筆書写用鉛筆で、「トメ、ハネ、ハライ」などの筆タッチが表現できるという。芯径は4ミリ。群馬県内と埼玉県内だけで販売されている(画像クリックで拡大)

 モノの名前は、必ずしも科学的、分類学的に正しいモノとは限らない。時として誤解を生む。シロアリはアリの仲間ではないし、タラバガニはカニの仲間ではない。私たちは茶碗に飯を盛る。長距離用ゴルフクラブがウッドだったのは、ずっと過去の話だ。今はチタンやカーボン等の複合素材、なんと呼んだらよいのやらといったところだが、そのとき主流だった材料名がその製品群を表す一般名称になることは珍しくない。

 文房具にも分かりやすい事例は、たくさんある。今市販されているほとんどの消しゴムは塩化ビニルやエラストマと呼ばれるプラスチック製だし、鉛筆は鉛ではなく、黒鉛(この名前も紛らわしい)=炭素を使った筆のようなものである。鉛(Pb)と、黒鉛(C)は、まったく異なる元素で、性質はまったく異なる。鉛は有害のため、鉛筆を舐めると病気になるとか、いわれのない迫害を受けることにもなったりする。文房具の代表的アイテムであるはずの鉛筆ですら、この状況なのだ。

 歴史をさかのぼると、黒鉛が発見される以前には棒状の鉛や銀などを先端に使用した筆記具が使われた時期はあるらしい。だが、今の鉛筆とは全く違う。しかし、名前は間違えられたまま、「鉛筆」だ。「鉛でできた筆のような物」、しかし、鉛筆は当然、筆よりも硬い。そこで、鉛筆は書道の練習では「硬筆」と呼ばれるようになった。しかし、技術が進むと、今度は柔らかい硬筆が登場する。まるで筆のような柔らかさという意味で、この鉛筆は「筆鉛筆」というネーミングである。もはや、自分のルーツが名前の中に重複して、変なことになっている。

 今回紹介するのは、その「筆鉛筆」である。