「最近、いちばん活躍している音楽プロデューサーは誰ですか」と尋ねられ、とっさに「島田紳助」と答えたのはよかったのだが、これがよく考えるとジョークでなく現実であることに思い至って冷や汗をかいた。

 そうなのだ。90年代、小室哲哉、小林武史、つんく……とミリオンセラーの時代をキラ星のごとく駆け抜けた、本職の(作詞や作曲までする)全権型音楽プロデューサーの代表格は、今や紳助なのだ。

 今年、上半期、自分が司会をつとめる「クイズ!ヘキサゴンII」から、おバカさんたちを集めて、まず女性3人組pabo(里田まい、スザンヌ、木下優樹菜)をデビューさせ、次いでその男性版・羞恥心(しゅうちしん)をブレイクさせて、その後にラクダとカッパ(クリス松村とアンガールズ山根)を送り出した。作詞は紳助本人、作曲は昔の友人、世界歌謡祭でグランプリをとったアラジンの高原兄。だからか、7月30日にはpaboと羞恥心を合体させたユニット、その名も「アラジン」が出る。

 振り返れば、関西の番組「紳助の人間マンダラ」では島谷ひとみ(当時は演歌)や西日本で大人気を博したウエストサイド(お笑いコンビのランディーズ、ロザン、キングコングが合体)も手掛けていた。結構幅広いのだ。

 音楽業界ではパフュームの音楽プロデューサー中田ヤスタカくらいしか現役バリバリはいない。そんなことでいいのか?

(文/エンターテインメント評論家 麻生 香太郎)

【初出】日本経済新聞、2008年7月19日夕刊
※「テレビの壺」は麻生香太郎氏が日本経済新聞、土曜日の夕刊に連載中のコラムです。日本経済新聞に掲載後、麻生氏および日本経済新聞社に許可を得て転載しております。

著者

麻生香太郎(あそう こうたろう)

大阪市生まれ。東京大学文学部卒。在学中に歌謡曲の作詞家として活動を開始。森進一、野口五郎、小柳ルミ子、小林幸子、TM NETWORKらに作品を提供した。その後、80年代半ばにエンタテインメントジャーナリストへと転身。以来、20年以上にわたって業界をウォッチし続ける。現在は「日経エンタテインメント!」「テレビ・ステーション」などで連載コラムを執筆中。著書に『ジャパニーズ・エンタテインメント・リポート』(ダイヤモンド社)など。