『野田版 愛陀姫(あいだひめ)』
出演(野田版 愛陀姫):勘三郎、七之助、橋之介、勘太郎、亀蔵、彌十郎、扇雀、福助、三津五郎
歌舞伎座にて、『八月納涼大歌舞伎』(8月9日〜27日)、第三部の二で上演。
1等席1万2000円 、2等席8400円、3階A席3500円 、3階B席2000円 、1階桟敷席1万4000円
今年で19回目を迎える『8月納涼大歌舞伎』。写真は制作発表会のときのもの。

 野田秀樹中村勘三郎。2人は01年からともに、大げさでなく歌舞伎座に革命を起こしてきた。保守の牙城ともいえるこの劇場で、ウエストサイド・ストーリーから想を得た舞を披露してしまったり、俵万智の『サラダ記念日』をパロったセリフを取り入れたりして、堅物な大人たちを煙に巻いてきたのだ。そんな2人がまた今年の8月、歌舞伎座で新たな冒険を仕掛けにかかる。なんとヴェルディのオペラ『アイーダ』を、その名も『野田版 愛陀姫』と翻案して上演するという。

 私はこの2人のおっさんのこういうヤンチャぶりが大好きだ。なぜっていつでも誰よりも能動的に「面白がらせよう」とほくそ笑んでいるから。極端な話、このおもしろがらせたいという衝動が人一番強いからこそ、彼らはいつまでも疲れ知らずにトップランナーで居続けられるのだと思う。

 話題がいきなり飛ぶが、このあいだクロアチアを訪れたとき。この「面白がらせる」ことのエネルギー値の重要性に改めて気づかされる出来事があった。クロアチアの首都ザグレブは、こんなこと言っちゃなんだが、一見、首都とは思えないほど何も娯楽がないダルな街で、それこそユーロ杯でそれなりに勝ち進んだ日には、街中の男どもがその話だけで1週間は持ち切りになりそうな土地であった。

 で、そんな街だからこそ東京では信じられない娯楽が成り立っていた。名づけて、美女ウォッチング。1本の道を挟んで両脇に軒を連ねる数件のオープンカフェにいい年の男どもが日長一日腰掛けて「退屈だよなぁ」「うぉ、あの女、超エロい」とか言いながら、何時間でもダベっているのである。着てるTシャツもくたくたで、なんともダメな男たち。で、この男どもとは対照的に、私が知人になったクロアチア女性たちは、とてもアクティブで活力に溢れる人たちが多かった。なぜか。おそらくそれは彼女たちがどこかで私の美しさを「見せたい」「見せてやりたい」という能動的な意志をもって日々を送っているからじゃなかろうか。

 まあそれだけではないにしろ、私の出逢った人々のデータからいくと確実に女性たちのほうが仕事や趣味や恋愛に奔走して輝いていた。要点をまとめるなら、人生をより豊かに楽しみたいのなら、どこかから娯楽が降ってくるのを待つよりも、自ら娯楽を仕掛けたほうが数倍いい。そんなことを異国の地で、私は改めて思ってしまったのだ。私の考えでは野田と勘三郎をクロアチアに送り込んだら、2人はおそらくこの美女ウォッチングの観客になるよりも、女装をして、キャットウォークを練り歩くほうを選ぶように思う――。