英国のテレビのオーディション番組「Xファクター」第3シーズンでグランプリに輝いた23歳の女性シンガー、レオナ・ルイスの活躍を見ていると、日本でもオーディション番組を絶やしてはいけないなと痛感する。彼女は、全英チャート1位、ビルボードチャート1位と若くして英米を制覇してしまった。

 英国からは、またポール・ポッツという中年の新進オペラ歌手が来日していたが、こちらは37歳で、これまたオーディション番組出身者だ。

 日本の放送関係者が、口を揃(そろ)えて同様の番組をやりたいというFOXテレビ「アメリカン・アイドル」からは、初代グランプリのケリー・クラークソン(2002年、当時20歳)。最初は危うかったのに、1年たつと別人みたいに成長して、正統派実力歌手にバケてしまった。

 この番組の内容を聞いた当時は「ASAYAN」(テレビ東京系)のパクリではないか、と訝(いぶか)しがっていたのだが、今では立場が逆転して、すっかりお株を奪われてしまった恰好(かっこう)だ。

 思えばASAYANからは鈴木亜美、モーニング娘。、ケミストリー、EXILEのアツシ、池脇千鶴、加藤ミリヤ(当時は加藤美穂)ら、キラ星のごとく才能が輩出した。後継の「イツザイ」(テレビ東京ほか)という深夜番組はあるが、できればゴールデンで息長く続けてほしいものだ。ASAYAN終了は6年前、2002年のことなのだ。

(文/エンターテインメント評論家 麻生 香太郎)

【初出】日本経済新聞、2008年6月7日夕刊 ※「テレビの壺」は麻生香太郎氏が日本経済新聞、土曜日の夕刊に連載中のコラムです。日本経済新聞に掲載後、麻生氏および日本経済新聞社に許可を得て転載しております。

著者

麻生香太郎(あそう こうたろう)

大阪市生まれ。東京大学文学部卒。在学中に歌謡曲の作詞家として活動を開始。森進一、野口五郎、小柳ルミ子、小林幸子、TM NETWORKらに作品を提供した。その後、80年代半ばにエンタテインメントジャーナリストへと転身。以来、20年以上にわたって業界をウォッチし続ける。現在は「日経エンタテインメント!」「テレビ・ステーション」などで連載コラムを執筆中。著書に『ジャパニーズ・エンタテインメント・リポート』(ダイヤモンド社)など。