携帯電話契約者の純増数で「ひとり負け」が続く中、2008年4月18日、NTTドコモの代表取締役社長の中村維夫氏が「新ドコモ宣言」を行い、新ロゴを発表した。今年7月1日からは新生NTTドコモによるブランド展開が本格化する。その重要な役割を果たしたのが、日本コカ・コーラの会長であり、NTTドコモの特別顧問である魚谷雅彦氏だ。そこで今回は魚谷氏に、NTTドコモのブランド改革に至る経緯と具体的な改革内容について話を伺った。前編、後編の2回にわたってお届けする。(聞き手・文/山田久美)

日本コカ・コーラの会長でNTTドコモの特別顧問の魚谷雅彦氏

最初は中村社長の人柄に感銘

―NTTドコモの中村社長からブランド改革に関する相談を持ちかけられたと伺いましたが、その時の率直なご感想は?

魚谷氏:私自身は長年にわたって日本コカ・コーラで働いてきたわけですが、ドコモとは、私が日本コカ・コーラの副社長の時代に一緒に自動販売機とiモードを連携させたサービス「Cmode(シーモード)」の推進を行った間柄にありました。そのため会社同士は現在も提携関係にあります。しかしながら、中村社長とは個人的には一度くらいしかお会いしたことがありませんでした。

 最初、中村社長からご連絡をいただき、「当社には色々な課題がある。相談に乗ってくれないか」と打ち明けられたときには、正直申し上げて、大変驚きました。あれだけの高収益を出されている日本を代表する大手企業なわけですからね。逆に私にとっては、ほんの十数年間で急成長され、これだけのビジネスを構築されてきたという点において、非常に尊敬すべき企業だったのです。ですから、最初は「そういった企業の社長の悩みは、どういうことだろう」と思ったんです。

 また、それと同時に、私のような外部の、しかも年下の人間にフランクかつオープンに問題点を打ち明けて下さったことに対し「非常に素晴らしいお人柄の方だな」と、大変感銘したことも覚えています。

 ただ、ドコモに関しては、以前から1点だけ気になっていたことがありました。ビジネスをグローバルに展開するコカ・コーラに身を置く私には普段から「これだけの高い技術力を持っているのだから、もっと海外に出ていって欲しい」「60億人の消費者の生活に密着したブランドになってもらいたい」と思うような日本企業が複数存在するのですが、ドコモはその中の代表的な企業の1つだったのです。

 そのため、実際に中村社長にお会いして「ドコモを発展させていきたい」「ブランド力が低下してきているので、その再構築をしたい」と聞かされたときには、「もっと海外に出ていっていただきたい。グローバル規模でブランドを確立していって日本を代表する企業になっていただきたい」ということを伝えました。