筆者は2008年1月17日に行われたMIAU(インターネット先進ユーザーの会)主催のシンポジウム「ダビング10を考える」講演の冒頭で「ここに至ってコピーワンス緩和の議論を振り出しに戻すような動きがあるが、情報通信審議会の中間答申とはいったい何だったのか!?」と発言したが、ここに来て再び同じ意見を言わざるを得ない状況になってしまった。速報でお知らせしたように、「2008年6月2日スタート」とアナウンスされていたダビング10の実施が不透明になってきたからだ。と同時に、ダビング10対応バージョンアップの情報も聞かれない。これはいったいなぜなのか? 技術解説を交えてダビング10延期の真相に迫ってみたい。

本来は全国の放送設備の改修が必要

 ダビング10施行を間近に控えて「そろそろレコーダーなどのバージョンアップの予定が具体的にアナウンスされるはず」と期待していた録画機ユーザーも多いことだろう。しかし、各メーカーともに、そうした動きは見られない。各メーカーのWebページを見ても「ダビング10に“対応予定”」というだけで、それ以上の具体的な対応策が出てこないのだ。そうこうしているうちに今回のダビング10延期が明らかになった。実はこれらの動きは単にメーカーの対応の遅れ、では説明できない理由があるのだ。

 その理由を知るために、まず、ダビング10放送の基本ルールを知っておこう。詳しくは筆者の「ダビング10の解説」を参照してほしいが、ダビング10に移行すると、地デジなどのデジタル無料放送には、従来のコピーワンス(CCI:copy control information)信号に加えて、新たにダビング10を表す信号フラグ(コンテント利用記述子)が付いて、ダビング10対応の放送波となる。

 ダビング10施行後もWOWOWなどの有料放送はコピーワンスのままになると予想され、こうした有料放送では、従来のコピーワンス信号だけが付いてコピーワンスになる。これらの信号をダビング10対応レコーダーが判別する仕組みだ。

 上記の場合、ダビング10に移行する“Xデー”の日時はあまり重要ではない。事前にレコーダーに信号フラグなどを識別する機能を搭載しておけば、いつダビング10が開始されても対応できるからだ。

 一方で、デジタル放送波にダビング10を表す信号フラグを新たに乗せるためには、全国のNHKや民放の放送設備をすべて改修する必要が出てくる。改修はソフトウエアの追加で可能のようだが、放送をいったん中止するなどの手間が必要で、全国規模でこれを行うと、やはり時間とコストがかかってしまうのである。