iモードの海外展開はどうなるのか?

 さて、iモードといえば、かつては海外進出が話題になった。しかしその後、あまりいい話は聞かないように思える。国内メーカーも海外市場から撤退を余儀なくされている。今後、iモードの海外展開はどうなっていくのだろうか。

 「実は、もともとiモードの海外展開は、905iシリーズを照準にしてきた。いや、正直言って、本当は903iシリーズでGSMを標準搭載しようと思っていたが、1年遅れてしまった。905iが出て、国内だけでなく海外で使える世界が実現してきた。今年は海外のiモードオペレーターの一部に、905iベースの携帯電話を入れようという活動をしている」(夏野氏)

 バルセロナの会場を見渡しても、905iシリーズのように、3インチクラスのVGA液晶を搭載し、なおかつ薄く、映像や音楽を再生できる端末などほとんどない。日本メーカーの技術力の高さは、海外メーカーの数年先を走っているのは間違いない。しかし、現実は厳しい面もあると夏野氏は続ける。

 「こういうマルチメディアのサービスが必須であるという点に、全世界の各プレーヤーが気付き始めた。そのため、端末で差別化がしにくくなっている。ここは挑戦しなくてはいけない点だろう。ただ、海外のiモード採用オペレーターの受け入れ準備はできている。

 ただし、905iは完全な海外GSM仕様ではないので、多少のチューンアップは必要。日本のマーケットサイズをてこに海外へ進出するというのが、日本メーカーにとって最大で最後のチャンスかも知れない」

 三菱電機の撤退などはあったが、一方でシャープは中国市場への進出を検討しているとされている。iモードを採用する海外オペレーターはNTTドコモと二人三脚で海外に進出できるが、iモードを採用しない国は、メーカーの自力での勝負となる。果たして、日本メーカーの海外進出は、あり得るのだろうか……。

思い切って聞いた! ところで「夏野さんはどうなっている?」

 最後に、最も聞きにくく、また最も聞きたかった質問をぶつけてみた。ここ最近、ケータイ業界の関係者で話題となるのが「夏野さんはどうなっている?」という話だ。

 昨年末の905i/705i新製品発表会で、夏野さんがプレゼンテーションをしなかったこともあり、ケータイ業界では夏野さんの現状を気にしている人間が多いのだ。業界関係者の中には「夏野さん、辞めるのでは?」と推測する人間も多い。

――いま、夏野さんが注力していることは何なのですか?

夏野氏:次のサービスもあるし……。もうひとつ、大きい情報サービス系があるので、それを少しやっている。また、映像コンテンツの強化のために映画事業とかをやっている。この1年でiモードで映像コンテンツが充実してきた。映画の予告編はiモードでほとんど見られるようになってきた。

 さらに、おサイフケータイがかなり普及し、日本人のライフスタイルを変えてきた。ここからは、どうやってNTTドコモの収益につなげるかが課題になっている。

――おサイフケータイを収益につなげる秘策とは?

夏野氏:あっても言わない! ただ、この分野はきっちりと果実をとりたい。会社のビジネスとして。新しいビジネスの形態を、我が社がきちんととれるかにかかっている。いろいろ大変。

――DCMX/iDといったクレジット以外にもありますかねぇ?

夏野氏:あるんですけど……やるために一歩踏み込んでいかないといけないと。通信業界以外に踏み出せるかどうか……。

 かつて、NTTドコモはクレジットカード事業を手がけようとしたが、「クレジットカード業界は村社会」といわれ、クレジットカード業界から猛反発を受けたことがある。そこにあえて挑むため、三井住友カードを買収した経緯がある。また、“村八分”になろうと言うのか?

夏野氏:村八分? でもクレジットカード業界は全部ついてきたからねぇ。あれはひどかったなぁ。今は全部、ついてきてるから。結局、みんなついてきたでしょ。それにしても、あれはひどかった。でも、ああいうことは僕は日本人のライフスタイルの変化にはやって良かったと思っている。

 このとき、夏野氏は過去に手がけたiモードビジネス、さらにはおサイフケータイビジネスを開拓してきた経験を振り返り、とても満足しているように見えた。

 夏野氏が抜けたNTTドコモの行く末がどうなるか心配でならないが、とはいえ、夏野氏は今後、どんなことをして、ケータイ業界、あるいはコンテンツ業界を盛り上げてくれるのか。今後の新たな活躍に期待したい。

どこへ行く、夏野氏……本当にドコモを辞めるのだろうか? その答えは、そう遠くない時期に明らかになるだろう(画像クリックで拡大)

著者

石川 温(いしかわ つつむ)

石川 温

 ケータイジャーナリスト。日経ホーム出版社に入社し、月刊誌『日経トレンディ』編集記者に。ケータイ業界を中心にヒット商品、クルマ、ホテルなどで記事を執筆。2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界はキャリア、メーカー、CPなど幅広く取材。2008年8月に技術評論社より「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦 ~AndroidとiPhoneはどこまで常識を破壊するのか」を出版。