残念ながらというか、やはりというか。

 この連載で2月にとりあげた『ロード・オブ・ザ・リング・ミュージカル』のロンドン公演の閉幕が早々に決定した。千秋楽は7月19日。莫大な予算をかけた“鳴りもの作”であったにも関わらずたったの492公演という残念な短命に終わった。けれどプロデューサーのケヴィン・ウォーレスは不屈の商魂でまったくめげず、来年からは、ドイツ、ニュージーランド、オーストラリア、そして“ファー・イースト”でのツアーを敢行予定だとか。ファー・イーストってことは、日本にも来るのだろうか。そして果たして客は入るのだろうか──。

『オリバー!』の公式サイト

『オリバー!』の公式サイト:http://www.bbc.co.uk/oliver/

 さて、今回ここでとりあげたいのは、閉幕予定の『ロード・オブ〜』のあとに、9月から同じくドルリー・レーン劇場で幕を開けるミュージカル『オリバー!』。オリバーと言えば、最近はロマン・ポランスキー監督が映画化を試みて一時話題となったが。やはり日本での知名度は1968年のマーク・レスター主演映画が断トツ。それは英国でも同じことで、誰もがマーク・レスターに勝るとも劣らないイノセントで愛くるしいオリバーの誕生を望んでいる。で、今回のこのミュージカルの何がそんなに話題かというと、そのオリバー君を「リアリティTV」内で選んでしまおうとしているのだ。その名もずばりオリバーの劇中歌からタイトルをとった『I'd Do Anything』と題し、3月の15日から英国のBBC1で放映が開始されている。

 日本でも『アメリカン・アイドル』をはじめとるするオーディション番組は近年注目を浴びているが、この『I'd Do Anything』はそのミュージカル版と考えてもらえれば分かりやすい。地方予選、ロンドン審査、そしてスクールと呼ばれる合宿審査を経て、数週間にわたるテレビ投票で勝者を決定。3人のオリバー役と1人のナンシー役を、厳正に選び抜くことになる。

 実はこのミュージカルスター発掘番組は、今年で3シーズン目を迎える人気シリーズ。2006年には『How Do You Solve A Problem Like Maria?』と番組名を題し、パラディアム劇場で開幕した『サウンド・オブ・ミュージック』のためのマリア役を選出。2007年には『Any Dream Will Do』の名のもと、現在もアデルフィ劇場で上演中の『ヨセフと不思議なテクニカラーのドリームコート』のためにスターを誕生させた。過去の2シリーズはどちらも40%に迫る高視聴率を獲得。また副産物として今までさほど演劇文化に興味のなかった大量の一般視聴者をウエストエンドに送り込むという成果をあげ、『ヨセフ〜』などは先行予約の時点で約1000万ポンド(日本円にして約20億円)の驚異的な売り上げを記録した。