東芝がHD DVD撤退を検討していることがスクープされ、大きな話題を呼んでいる。公式には「HD DVDの今後の事業方針について現在、検討中。現時点で決定した事実はない」(東芝広報)と具体的な内容については未知数だ。しかしながら、ワーナーブラザースのBD(Blu-ray Disc)一本化や、米国最大手のスーパーマーケットであるウォルマートのBD支持から考えると、次世代光ディスクは事実上BDに統一されることが確実といえそうだ。そこで筆者なりに次世代光メディア統一の背景と意味、そして録画ファンとしての思いを述べてみたい。

IT産業にとっては早すぎる決着?

Blu-ray Discと“次世代DVD戦争”を繰り広げたHD DVDだが……(写真は2007年10月に千葉・幕張で開催された「CEATEC JAPAN 2007」より)(画像クリックで拡大)

 今回の“東芝HD DVD撤退”スクープには「東芝上層部の意志が働いたと推測される」「上から大なたを振るわないと争いは終わらない、ということなのだろう」などなど、さまざまな憶測が飛び交っている。だが漁夫の利(?)を狙っていた、マイクロソフトを代表とするIT産業には早過ぎる決着と言えそうだ。IT産業の狙いが「HD DVDを推奨することによって次世代光メディアを分裂させて、ネット配信までの時間を稼ぐこと」だとすれば、まだ期は熟していない。現状のインターネットのバンド幅やスループットからすると、高解像度動画の有料ネット配信にはほど遠い状況と言えるからだ。

“ネット配信シナリオ”の破綻(はたん)

 今回の予想以上に早い統一劇に、ハリウッド(米国映画産業)の意志が大きく働いたことは確かだろう。ハリウッドは「BDかHD DVDのどちらを選ぶか」で語られる場合が多いが、大局から見ると「ハリウッドはITを選ばずに、日本の家電メーカーの光ディスクを選んだ」と言えそうだ。

 技術的にネット配信が現実的ではない、あるいは配信の実現まで待てないという事情もあるだろうが、ハリウッドがIT産業とのコラボレーションに危険を感じていることは確かだろう。映画コンテンツがサーバーから配信されるようになれば、コンテンツ上映の実権をIT産業に奪われてしまう危険があるからだ。上映回数や課金などの情報もIT産業から受け取らねばならなくなる。Googleやマイクロソフトをはじめとする巨大なIT産業とタッグを組めば、「軒先を貸して母屋を取られる」──そうした危惧(きぐ)がハリウッドにはあるのだろう。

 そうした危惧とは対照的に、日本の家電メーカーはハリウッドと上手に連携してきた。コンテンツはハリウッド、メディアと再生機器は日本メーカーという分野調整がうまく行われているのである。(バブル時代と違って)現在の日本メーカーはハリウッドの母屋を取ろうとはしない。こうした点でハリウッドは「ネット配信よりも日本メーカーの推すパッケージ光メディアが当面の現実解」であり、「光メディアを選ぶならマイクロソフトやインテルの息のかかっていないBDを支持する」という結論に至ったのだろう(これには、コピープロテクションを破られてしまったDVDから次世代光メディアに移行したいというハリウッドの思惑も加わっていることと思われる)。