「永久凍土」というと、ずっと解けることなく、氷に閉ざされた地というイメージがあります。

 実際、定義のうえでも、永久凍土とは「2年以上、地中温度が0℃以下になる土壌」を意味しています。北半球では、陸地の約20%を覆っていて、ロシアのシベリア地方や、米国のアラスカ州、カナダの北方、グリーンランド島(デンマーク領)などに分布しています。また、高度のあるアルプス地方やヒマラヤ地方は高地が永久凍土で覆われています。

ツンドラ地帯に冬が訪れる直前、シベリアのバイガチ島では丈の低い植物が地表を黄土色や金色に染め、つかの間の秋を彩る
Photograph by Bernhard Edmaier (c)2007 National Geographic(画像クリックで拡大)

 世界の永久凍土の大半は数千年も凍ったままで、大量の炭素を含む有機物を閉じこめています。極寒地域の永久凍土は、厚さが数百メートルにもなり、地表から深さ1メートルほどまでは「活動層」と呼ばれ、季節ごとに凍結と融解を繰り返しています。地球温暖化が進み、寒さが弱まった永久凍土地帯では、活動層が厚くなっていき、地中の温度も上昇していきます。活動層内部の有機物に含まれる炭素の量は、推定5000億~1兆トンにも達します。一方で、大気中には8000億トンの温室効果ガスがあり、温度が上がると地中の微生物の動きが活発になるため、有機物の分解が加速され、大量の二酸化炭素やメタンが大気中に放出されるおそれがあるといいます。

永久凍土の表層を覆う活動層では、融解と凍結が毎年繰り返される。この活動層の拡大と縮小によって、地表付近の細かい堆積物や粗い砂礫(されき)が混ざりあい、ふるいにかけられ、何百年もかけて線と円の複雑な模様が作られる。写真は、北極圏にある島の地表。まるで人工的な装飾のように見える
Photograph by Bernhard Edmaier (c)2007 National Geographic(画像クリックで拡大)

 特集記事「消えゆく永久凍土」を執筆した作家バリー・ロペスは、永久凍土の写真を見つめながら「人類の“感受性”が退化しているのではないか」と記しています。北極圏は、世界のどの地域よりも、地球の気候変動の影響がはっきりと表れている場所です。かつて炭坑では、有毒ガスの有無を調べるためにカナリアを坑道に持ちこんだといいますが、地球を炭坑にたとえるならば、北極圏という名のカナリアは今、弱々しい鳴き声をあげている、とロペスは言います。