米ワーナー・ブラザースは1月4日、次世代DVDの支持をBDに一本化するというビッグニュースを発表した。その決定を後押ししたであろう市場背景、映画スタジオの動きやもくろみなどについて、BD陣営のキーパーソンである松下電器産業 蓄積デバイス事業戦略室の小塚雅之室長に聞いた。

ワーナーのBD支持を受けて2008年1月に追加取材を実施

折原: 前回の取材からやや時間が空きましたが、2008年1月4日に米ワーナー・ブラザースが次世代DVDの支持をBDに一本化するというビッグニュースを発表しました。BDA(Blu-ray Disc Association:BDの標準化団体)の発表によると、映画スタジオマーケットのシェアはBD陣営が68.4%と、HD DVD陣営に対して大きく差を付ける結果になりましたね。今回の決定については、どのような背景があったものなのでしょうか。

DVDタイトル販売におけるハリウッド映画スタジオの勢力図。Los Angeles Timesによると、ワーナー・ブラザースやフォックスなど、BD陣営の市場シェアは68.4%にも上るという

小塚氏: ワーナー・ブラザースのことは想像でしかコメントできませんが、我々は、今回の決定の背景を次のように考えています。北米でのDVDタイトル販売の歴史からお話しますと、DVDが登場した初年度の1997年にはソフト販売が500万枚程度でしたが、2年目に2500万枚、3年目には1億枚と急激に市場が立ち上がりました。これが2005年くらいになると16.6億枚まで伸びており、現在のハリウッドスタジオは収入の半分以上をDVDで稼いでいます。ただし2005~2006年は伸びが止まって飽和状態になり、2007年には2%程度減少しているのが現状です。

折原: そうしたDVD市場の動向が、次世代DVDへの移行を映画会社に急がせているということですね。

今回の取材は電話会議システムを利用して、米ラスベガスで開催された「International CES 2008」に出張中の小塚雅之氏にインタビューした(画像クリックで拡大)

小塚氏: そうです。次世代DVDのタイトル販売は2007年で2年目になりましたが、BDとHD DVDのソフト販売枚数は700万枚程度と、DVDの2年目の3分の1程度にとどまっています。プレーヤーの数は、PS3の販売数量を200万~300万台と見ても、BDとHD DVDの合計で400万台以上あります。DVDと比較すると、ハードウエアの売れ行きで勝っているのにもかかわらず、ソフト販売は700万枚程度と立ち上がりが良くない。このことをスタジオも我々も理解しています。

 この差異は、色々な理由が考えられるかも知れませんが、スタジオは「最大の理由は規格戦争のため消費者が買い控えをしているのではないか」と危惧(きぐ)しています。DVDの時は、3年目に急激にソフトの売り上げが上がったので、次世代DVDの3年目である2008年を大変重要な年と考えていると思います。したがって、これ以上フォーマット戦争が継続して、買い控えが継続する状況はなんとしても避けたいと考えたのではないでしょうか。

折原: 2008年の次世代DVD市場は、2007年に比べてどの程度の規模まで拡大すると考えていますか。

小塚氏: 毎年、CES(International Consumer Electronics Show:世界最大の家電展示会イベント)の際に映画会社の幹部と個別にミーティングを行うのですが、どのスタジオも、3年目の今年は11億~13億ドル(1ドル110円換算で1210億~1430億円程度)くらいの規模まで成長させられると考えているようです。つまりDVDのような急激な普及を期待していますよ。

折原: 今回のワーナー・ブラザースの決断も、「次世代DVD同士の争い」から「現行DVDから次世代への移行」に軸足を移していこうという決意の表れだったということでしょうか。

小塚氏: そう思います。次世代DVDの規格争いを終結させることで買い控えのリスクが消え、本格的な成長路線に転換できると確信したからだと思います。またDVDの歴史を振り返ると、4年目となる2000年から2001年にかけてが映画会社にとっても大きな節目でした。2000年まではスタジオの売り上げはレンタルビデオが主体でしたし、レンタルの内訳も90%くらいがVHSだったんですよ。セルについても2000年の時点ではVHSの方がDVDより多かったのです。

 ところが2001年ではレンタルとセルとが逆転したと同時に、VHSとDVDの売り上げも逆転しました。これ以降急速にDVDへの移行が進みました。したがってワーナーにとっても、この2、3年くらいの間で次世代DVDを本格的に立ち上げないといけないという危機感があったのでしょうね。