アウォさんの家を出ると、トクシのおっちゃんは、
「今度は永寧にある酒造会社を見に行かないか?」
と言ってきた。おお、のぞむところだ。

「もちろん行く!」
と目を輝かせる私を見て、おっちゃんは
「今日は楽しいか?」
と聞く。

「うん、楽しい!」
やっぱりこのおっちゃんと仲良くなって正解だ。とくに酒がらみのことになると、私の勘はよく当たる。

 酒造会社は、朝行った市場の近くにあった。おっちゃんのあとについて、看板も何もない門の中へ入ると、棚にトウモロコシの粒が広げてあり、片隅に大きなカメがいくつか置いてあった。そこへ、白髪頭のひょうひょうとした感じのおじさんが現れた。この人が社長だという。

チョークで床に筆談。酒造りの方法を聞いた(画像クリックで拡大)

酒葯(チューヤー)も手造り(画像クリックで拡大)

酒造りの現場を見学(画像クリックで拡大)

 社長に「原料は?」と聞くと、入り口のコンクリートに、チョークで「トウモロコシだが、飼料用の安いものだ」と中国語で書いてくれた。工場には、トウモロコシを煮る釜と蒸留器があり、あとは成都で見た窖(あなぐら)の代わりになる、浴槽のようなコンクリートの穴が並んでいる。その中ではビニールにくるまれたトウモロコシが発酵中だった。白酒独特の個体発酵で、これが日本で言うところのもろみにあたる。

 社長がチョークで書いたことを解読すると、造り方は、トウモロコシを蒸して冷まし、麹と酵母の働きをする酒葯(チューヤー)を混ぜて13日かけて発酵させることを5回繰り返し、6回目に蒸留するというもの。市販の本格的な白酒に比べると簡易的な方法で、村では一般的にこうした安い酒を量り売りで買ってきて飲んでいるそうである。安酒とはいっても、酒葯(チューヤー)も手造りしているし、できあがった酒は、軽い味わいで飲みやすい。窖独特の土臭さもなく、かなりイケてる仕上がりだ。アルコール度数は45~50度くらいある。

 この酒造会社では、社長、奥さん、その息子が中心になって、家族で手造りしていた。これから夕食を食べるから一緒に食べないかと言われ、ありがたくごちそうになる。ここでもあの豚の脂身が出てきた。ウマい。そして、奥さんが漬けたという巨大ニンニクの醤油漬けが秀逸だった。皮ごと漬けたのを、皮をむいて食べるのだが、激ウマ! ここで造った地酒とバッチリ合うのだ。私はニンニクをかじりながら、グビグビと酒を飲んだ。

 社長も、白酒をおいしそうにすすりながら、晩ご飯を食べている。毎晩自分の造った酒を飲みながら食事をするという。いい光景だ。私がいろいろ専門的な質問をして、酒造りに興味を持っていたことを、とても嬉しいと言ってくれた。なんとなく、日本の地方の小さな酒蔵を彷彿とさせる、いい蔵だった。

巨大ニンニクの醤油漬け(画像クリックで拡大)

酒造会社のファミリーと記念撮影(画像クリックで拡大)